ロケット打ち上げでオバマ政権にジレンマ

2009.3.19
同日12:50 更新



 
 space-war.comが、テポドン2号が発射された場合に、オバマ大統領が迎撃するかどうかのジレンマに直面するという記事を報じました。

 迎撃が成功するとしても、北朝鮮による報復を考慮しなければなりません。打ち上げ後の早い段階「ブースト・フェーズ」では、ロケットが北朝鮮が発表しているように宇宙空間へ向かっているかどうか疑問が残ります。「その時点では、現在向かっている進路から、宇宙空間へ向かっているのか、アメリカやどこか近くに向かっているのかは分かりません」と、ランド社のブルース・ベネットが主張します。ロケットが宇宙空間に向かうか、アメリカの大陸間弾道ミサイルが使うような低い軌道に入った時、ロケットの軌道は明らかになります。この時点で、オバマ大統領はアラスカとカルフォルニアに置かれている迎撃ミサイルを使うことができます。迎撃ミサイルの能力は激しく議論されていますが、軍は47回のテストの内37回成功していると主張します。法律上の問題もあります。ロシアが反対しているため、安全保障理事会はまだ北朝鮮に明確な警告を与えていません。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン(Michael O'Hanlon)は、日本に対する直接の脅威があるとか、安全保障理事会の法的な後ろ盾がなければ、迎撃する、または迎撃すべきかは疑わしい、と述べています。オバマ大統領がブッシュ政権の一方的な行動を非難してきたために、国連の承認のない行動はためらわれます。オバマ大統領にとって最もよいシナリオは、北朝鮮が打ち上げに失敗することです。迎撃に失敗すれば、それは北朝鮮に勝利を手渡します。「アメリカの進歩のためのセンター(the Center for American Progress)」のアンドリュー・グロット(Andrew Grotto)は、「北朝鮮は、彼らが注目を欲したり、外交的な主導権を失うことを恐れたり、この地域の諸国に自分たちが考慮に入れられるべき力であることを思い出させたい時はいつでもミサイルをテストします」と述べました。

 先に、実際にアメリカはテポドン2号を迎撃できないと書きましたが、この記事はそれを裏づけています。それには技術的な理由と政治的な理由があります。この記事はその両方を解説しています。上の訳は全訳ではなく、一部をかいつまんだだけですから、もっと詳しく知りたい人は原文をお読みになるとよいでしょう。日本はPAC-3で迎撃する方針を決めましたが、このミサイルで守れる範囲はほんの僅かです。軍事問題において、完全な対応が取れることは希です。今回は、完全な対応をしようとするのではなく、できる範囲から地歩をかためるべきです。「もし、テポドン2号が我が国領域に墜落したら、残骸を回収し、我が国の科学力を総動員して解析する」といったコメントで圧力をかけておくといった工夫が必要でしょう。

 また、時間がないのでコメントが十分に書けません。この問題はまたあとで考えてみたいと思います。


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