ロシアが核戦力の質向上に尽力

2009.3.18



 military.comによれば、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(President Dmitry Medvedev)は、ロシアの核戦力は軍の近代化計画の中で最優先事項だと述べました。

 ロシアはNATOの脅威や国際テロや地域紛争をかわすための武器弾薬や戦闘の準備を更新しなければならないと、メドベージェフ大統領は述べました。「これらすべては軍の近代化を必要とします。我々は今、現在の経済問題にも関わらず、すべての必要条件を持っています。」と述べました。過去十年間、ロシアは偶発的な石油の利益により、その防衛費を4倍にして、老朽化した兵器を更新してきました。財政危機はこのゴールを達成する政府の能力に疑問を呈しましたが、防衛費は削減しないというのです。防衛当局は今年、1.51兆ルーブル(430億ドル)を武器購入に費やし、その25%は旧ソ連時代の老朽化した核兵器の更新にあてます。メドベージェフ大統領は「最優先事項について述べます。その中心の一つは、軍の準備の質的な増加、特に戦略核部隊にあります。それらはロシアの安全保障を確保するすべての仕事を達成するのを保証しなければなりません。」と述べました。ロシア軍は、過去よりもずっと速いスピードで、10基以上の新しい大陸間弾道ミサイルを年末までに配備ために予算を使う予定です。ブラバ・ミサイルもテストを完了して、年末までに配備する予定ですが、打ち上げテストは10回中5回失敗しています。一部の専門家は製造上の欠陥を失敗の原因としました。

 アメリカがテロ問題で躓いている間に、ロシアは着々と旧式兵器の更新に邁進しています。その一方で、アメリカとは核戦略削減で協調し、全体として自国への核の脅威をできるだけ低くしようとしています。このため、テロ問題でロシアはアメリカに協力し、アメリカもまたロシアと協力しています。実際には、協力し合う振りをしているのです。プロボクサーの試合では、簡単にクリーンヒットは出ません。ボディを打ったり、足を使ったりしながら、相手と自分の体力差が出るのをじっと待つのが戦略です。国際政治も同じように、勝ちたいところでいきなり勝負に出るのではなく、外堀を埋めるところからはじめていきます。これは平和を維持するための戦略ではなく、自国の国力だけを考えた戦略です。その点では、ロシアは実に巧みに、手を打ち続けています。ブッシュ政権は、テロ問題で手一杯で、こうしたロシアの動きに追いついていませんでした。オバマ政権はそのギャップを埋める役目を担っています。しかし、これは冷戦期への逆行という危険も含んでいます。大統領とそのスタッフが、この問題をどう捉えていくかが気になります。オバマ政権が対ロシア問題でどのような手を打つかも注意しなければなりません。


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