北朝鮮が4月初旬にテポドン打ち上げか?

2009.3.12



 連合ニュースが、北朝鮮がテポドン2号を来月4〜8日の間に打ち上げることを国際海事機関(IMO)に通知したと報じました。また、月その他天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)と、宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約(宇宙物体登録条約)に加入しました。

 打ち上げ前に、関係当局に通知を行ったり、宇宙開発に関する国際条約への加入することは、ロケット開発を行う他の国もやっていることです。これで北朝鮮は普通の国並みの態勢を整えたことになります。これが問題視されるのは、テポドン2号が人工衛星ロケットだと言うのは、北朝鮮の欺瞞工作だと言う意見があるからです。しかし、かなりの国が人工衛星ロケットを打ち上げながら、弾道ミサイルの技術も蓄積してきたわけで、この批判はダブルスタンダードとされる恐れもあります。CNNからして、弾道ミサイルの実験を隠すためだと報じていますが、人工衛星ロケットの打ち上げ実験は、弾頭の着水テストを除くと弾道ミサイルの打ち上げ実験と大差ありません。これを批判するのは、北朝鮮にロケット開発すべてを禁止するというのと同じであり、北朝鮮の強い反発を招く恐れがあります。

 打ち上げ期日は、今回発表されたとおり、4月初旬で間違いないでしょう。当初、2月中旬説まで出ましたが、どうして今回は拙速な報道が連続したのかが分かりません。4月初旬でも、天候を考えると、少し早いと思うほどです。こうしたスケジュールは、過去の実験と比較・検討すれば、自ずと正確に見積もられるはずであり、危機感を煽るような報道が多く出たことには、何かの力が働いているようにも感じられました。2006年のテポドン2号発射について、韓国の反応が鈍いことに世界が驚き、世界が自分たちをそう見ていることを知った韓国人が改めて驚くといったことがありました。だから、今回は遅れを取るまいという意識が韓国人の中にあるのかも知れません。

 以前から言っているように、テポドン2号は射程が長すぎて日本を攻撃できないロケットです。榴弾砲が自分にあまりに近い場所を砲撃できないのと同じで、テポドン2号はロケットの燃料がまだ燃焼中に日本列島を飛び越えてしまいます。従って、テポドン2号は日本の脅威とは成り得ません。すでに、日本のほぼ全域を攻撃できるノドンミサイルがあり、テポドン2号の打ち上げがどうなろうと、北朝鮮の日本に対するミサイルの攻撃力は一定のままです。日本政府がテポドン2号で騒ぐのは、ミサイル防衛推進の材料にできて、自分たちの利権に関係があるからです。現在でも日本を攻撃できるノドンミサイルのことをまったく言わないのは、日本政府がこれまで弾道ミサイルへの対処を何もやってこなかったことが露見してしまうからです。そうした矛盾を正そうとするパワーは、与党にも野党にもなさそうです。政治家に力がみなぎるのは、アメリから「やれ!」と指示された時だけで、この注射を打たれた時だけ、政治家たちは血相を変えて走り回ります。メディアもそれに同調し、国民の中にもそれに感染する人がいます。

 こうした事件について考える時、過去のデータを眺め、重要なデータを集めておくことは大事です。たとえば、昨日、韓国の釜山で大韓航空機爆破事件の元死刑囚・金賢姫と拉致被害者・田口八重子さんの家族が面会したことは、事件をリアルタイムで知っている人には感慨深いものがあったはずです。私は目頭が熱くなりました。日本社会は、北朝鮮の拉致が疑われるようになってからも長期間、この問題を放置し、被害者家族の活動を妨害までしてきました。問題を無視できなくなったのは、皮肉にも、金正日総書記が自ら拉致を認めるという前代未聞の博打を打ったためでした。ここまでの圧力がないと、日本社会が被害者の苦境に目を向けないという事実は、私には絶望的に感じられました。しかし、今日、テレビを観ていたら、ある女性タレントが、金賢姫が田口さんの息子に「私が韓国のお母さんになる」と述べた心境が分からないと言っていました。朝鮮半島の文化では、親しい間柄では相手を家族と呼びます。金賢姫自身が、自白した後は、韓国人の女性捜査官を「お姉さん」と呼んでいました。俳優のペ・ヨンジュン氏が、日本のファンを「家族の皆さま」と呼ぶのも同じ理由です。ちょっとしたことを知っているだけでも、問題を理解するのに役に立ちます。

 というわけで、4月初旬には「大変面白いショー」が待っていることになります。誰が何を言うのかを注意して見守ってください。そして、彼らの名前と顔、報道機関の社名を記憶するのです。メモを残しておけば、今後色々と役に立ちます。周囲の方の言動にも注意してください。デマに流されやすい人を発見する格好の機会です。観察の対象はテポドン2号というよりは、日本人そのものなのです。


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