イラク撤退期限をオバマ政権が再考中

2009.2.9



 興味深い記事がいくつか出ていますが、最も重要なものを紹介します。military.comによれば、バラック・オバマ大統領は、イラク撤退に関して少なくとも2つのオプションを検討しています。

 1つは選挙期間中に主張していた、すべての戦闘旅団を16ヶ月以内に撤退させる方法です。2つ目はそれを23ヶ月に引き延ばす方法。19ヶ月で撤退する中間的な3番目のオプションもあります。匿名を条件に語った高官によれば、いまは16ヶ月案と23ヶ月案に焦点が当てられています。また、アメリカはいくつかの旅団をイラク軍の訓練と顧問のために多目的部隊として再設計、再構成して残留させることを望んでいます。これらの部隊は非戦闘部隊と考えられます。防衛問題の顧問であるロバート・ゲーツ国防長官とマイク・マレン海軍大将は、まだオバマ大統領に勧告を提出しておらず、決定はなされていません。

 撤退期限ばかりにこだわると、現実の撤退計画が遅れる恐れもあり、多少の遅延は大きな問題とはなりません。ただ、23ヶ月は2年近くなるため、政権の任期の半分を食いつぶしてしまいます。やはり、遅くても19ヶ月以内に撤退するのが理想的です。理想的には16ヶ月で撤退を完了させ、公約が守られたことを記憶に残して欲しいところです。

 今回の記事で目を惹くのは、撤退期限よりも、その後に残留させる部隊の規模が数個旅団と分かったことです。そして、それらを非戦闘部隊と呼ぶというアイデアは、ちょっと無理がありすぎます。規模が2個旅団だとしても、これでは完全撤退とは誰も考えません。非戦闘部隊といっても、自分を守るだけの兵士は必要です。彼らが基地外をパトロールすることはないにせよ、いつでも出て行って戦闘ができるのは誰の目にも明らかです。おそらく、米軍は得意の軍事用略語を駆使して部隊の名称を新しく作り、従来の戦闘旅団とは違うことをアピールしようとするでしょう。しかし、それを理解するのはアメリカ人や英語を理解する人たちだけです。肝心のイスラム教徒たちには理解されず、戦闘部隊がまだ残留しているとみなされるだけです。アルカイダはこれを宣伝材料として利用するでしょう。これでは完全撤退の意味がありません。


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