米軍将官がアフガン増派に厳しい見通し

2009.2.21



 military.comによると、アフガニスタンの最高司令官デビッド・マッキアナン大将(Gen. David McKiernan)は、17,000人の増派は米軍と連合軍を手詰まりにしたタリバンをつけあがらせるだろうと述べました。

 マッキアナン大将は、約55,000人の兵士レベルは3〜5年間、維持されると述べ、この数は彼がアフガンを守るために要請した兵数の3分の2でしかないとも述べました。増派される部隊は夏までには配置を完了し、タリバンと戦うほか、アフガン警察軍の訓練にも従事します。大将は、増派が我々に許すのは、主に手詰まりになったアフガン南部の治安状況の力学の変化だと述べました。他に、戦いは最も激しい傾向がある夏を通して行われる必要があること。アフガン国民を怒らせている空爆を減らすのは可能ということ。タリバンは一部がアルカイダと協調し、一部はますますアフガンの政府と警察、輸送団に対する小規模な攻撃を増やしていること。タリバンは増大していませんが、弾力性があり、その戦略を変化させていることを述べました。

 マッキアナン大将は、タリバンが勝利に向かっていないと述べていますが、彼の発言全体を見ると、そうではないように見えます(コメントは全部訳していないので、興味のある方は原文をお読みください)。他に、最近、退役した将官のコメントも載っていますが、アフガン南部は手詰まりになっていると述べています。アフガン大使に任命されたリチャード・ホルブルックも、この増派で勝利はなく、何らかの追加の手段が講じられる必要があるという見通しを述べています。

 以上の通り、米政府は、この増派で問題を解決できるとは考えていません。これは正しい見解です。アフガンでも、アメリカはある程度の軍事活動を行った後に撤退することになるでしょう。マッキアナン大将が言うような戦略転換をタリバンが考えているとは思えません。彼らは経験的に正しいと考えていることをやっているだけだと思います。タリバンはそれほど高度な訓練をしませんし、新しい戦略思想を研究したりしません。アメリカにとって不幸なことに、そうした経験的判断が効果を発揮しているのです。そういう意味で、この増派はオバマ政権がアメリカ国民に「やるだけやった」と納得させるための増派といった性質を持っています。もちろん、こんな見解は米政府、米メディア共に認めようとはしないでしょう。それは現地で犠牲を払っている兵士を冒涜することになるからです。しかし、現在の戦闘の実状を正確に表現すると、こうした形にならざるを得ません。これが戦争の実態です。戦争は頭で考えたとおりには進展せず、やりたくない選択を強いられることがあるものなのです。これはオバマ政権の判断が誤っていることを意味しません。これが最善の選択なのです。また、この増派が5年間続くということは、他の地域で新しい危機が訪れた時に、米軍が手不足になることも注意すべきです。5年間に何事も起こらないとは考えられません。その際、日本にも軽い負担を求めてきます。それは、アメリカにとっては「軽い」負担でも、日本にとっては「重い」負担になる話です。アフガンでヘリ輸送くらいやってくれと頼まれるのが最も可能性の高い負担ですが、それ以外の後方支援任務を依頼される可能性が高くなります。自衛隊が米軍の後方支援を本格的に任される時代が来るということです。自衛隊が普通の軍隊になってしまう危険が高まることを、我々は認識しなければなりません。


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