イエメンのアルカイダ掃討に米が協力か

2009.12.21

 military.comによると、先日イエメンが行ったアルカイダの隠れ家と訓練基地への襲撃(34人殺害・17人逮捕。記事はこちら)にアメリカが軍事的な援助を提供しました。

 この記事の参照元となったThe New York Timesの記事を含めて紹介します。この軍事支援はイエメン政府の要請により行われ、オバマ大統領は軍事と情報の支援を承認しました。ABCニュースはアメリカがミサイル攻撃を行ったと報じましたが、イエメン人大使館の広報官は、それを否定しました。米高官は攻撃はイエメン軍単独で行われたと述べました。攻撃が行われたのは首都サヌア(San'a)から遠くないアビヤン州(Abyan province)でしたが、具体的な場所は明らかにされていません。

 目撃者は60人以上が殺害され、そのほとんどは女性と子供を含む民間人であり、攻撃目標はアルカイダの拠点ではなく、地方当局者は死亡した武装勢力は10人だけだと述べています。最初の記事は、7体の女性と子供の死体が瓦礫から引き出されたという目撃談を伝えています。空襲は数件の民家を爆撃し、兵士はアルカイダの隠れ家を間違えて、別の場所を攻撃しました。この地域の2つの病院は、26人の負傷した民間人の大半が女性と子供だと報告しています。攻撃目標はアルカイダの指導者とされるカシム・アル・レイミ(Qasim al - Raymi)でしたが、彼は攻撃を逃れました。

 状況はまだ十分に確認されていませんが、攻撃は成功したようには見えません。病院の報告に間違いがあるとは考えにくく、誤爆、誤射があった可能性が非常に高いと考えられます。そうすると、アメリカの軍事支援がどのような内容がったかが気になります。ミサイル攻撃の有無、それで民間人の犠牲が出たのかも含めて、もっと情報が必要です。

 アルカイダは拠点の分散化を進めており、これによってアメリカが戦力を集中しにくくして、攻撃をかわそうとしています。さらに、それを追撃しようとすると、今回のような民間人の犠牲が出ます。その結果、アメリカに対するイスラム教徒の憎悪が増加するという、これまで何度も繰り返された悪循環が起こります。アメリカは、こうした状況から積極的に脱出する努力をすべきなのですが、その具体策が聞こえてきたことはありません。現状を見ると、勢力のずっと小さいアルカイダの方が、戦略面で大国アメリカを先行しているように見えます。アメリカはアルカイダが自分の先を走っていること自体が信じられず、具体的な対策を打たずにいるように見えます。


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