オバマ大統領、アフガン戦略を語る

2009.12.16

 military.comによると、バラック・オバマ大統領はアフガニスタンの戦略について、機能しているかどうかを知るのは2010年末までかかると述べました。これは私が昨日取り上げる予定で、掲載できなかった記事です。

 多くのオブザーバーは、オバマ大統領が派兵を命令することにおいて、過度に分析的で感情から遊離しているように見えたと述べています。しかし、オバマ大統領は日曜日夜に放送されたCBSの「60ミニッツ」で、「私がどう感じたかという点では、あれ(演説)は実際、おそらくは私が行った中で最も感情的なスピーチでした。なぜならば、私はその一部がアフガニスタンに派遣される士官候補生たちのグループを見下ろしていたからです。彼らの何人かは戻ってこないかも知れないのです」。オバマ大統領は、大軍を増派しながら2011年7月に撤退を開始する両義性に対する批判について、アメリカが撤退フェーズへ移行するのだと述べ、地上戦の状況によって撤退の兵数や速度は決まると述べました。記事は、さらに「勧告された手法が機能しなければ、その時は手法を変えます」と述べて、大統領が自分に抜け道を与えたと書いています。その他、関連する情報が書かれていますが、省略します。

 大統領が分析的であることは特に困ることではなく、直感に頼った前ブッシュ大統領よりはマシと言うべきでしょう。士官学校の演説に関する大統領のコメントは愛国心に溢れる米国民を納得させるためで、軍事的には大した意味はありません。大統領がどう感じようと、戦場が残す結果は冷酷なまでに現実に即しているからです。しかし、多くのアメリカ人は国家のために戦うことをロマンチックにとらえ、大統領が軍事的には妥当な判断をすることにすら抵抗するかも知れません。こうした人たちは、しばしば感情的すぎて、戦況を正しく認識するのに失敗します。この記事が好例で、まったく軍事的なセンスを感じません。今回の増派に1年間かかることを考えれば、増派の成否は1年から2年間かけて判断すべきことであり、大統領は早めに判断するつもりであることを表明していると読むべきです。また、「抜け道」の話も、1年間以上も状況判断をして戦略を変更しない方がおかしいと言うべきで、オバマ大統領を批判する必要はありません。この記事はあまりにも政治的なセンスで書かれており、修辞的なセンスが強すぎます。

 たとえば、military.comの別記事によれば、パキスタンの指導者がタリバンと対話を行う意志を示し、一方タリバンが支配するトライバルエリアで軍事行動を検討しています。パキスタンのユサフ・ラザ・ギラニ首相(Prime Minister Yousuf Raza Gilani)は、南ワジキスタンでの戦闘が終了し、パキスタン政府はアラカザイで戦闘をはじめる前に、タリバンと対話を行いたいと述べました。テリク・イ・インサーフ(the Tehrik-i-Insaaf)の指導者イムラン・カーン(Imran Khan)とタリバン傘下のジャマット・エ・イスラミ(Jamaat-e-Islami)から協議の提案があり、これまではタリバンが降伏しなければ和平交渉を行わないとしていた政府方針を変更する可能性が出てきたのです。この交渉が成功するかどうか、交渉成立後に和平が保たれるかによって、対テロ戦の様相は大きく変化します。それによって戦略が変更されるのは当たり前のことなのです。修辞的な面だけを観察して、大統領の言葉の矛盾を突いたところで、戦争という特別な世界の中では言葉遊びに過ぎません。

 military.comの別記事によると、マレン統合参謀本部議長が「議論の時は終わった。行動の時だ」と声明しています。これまで繰り返し述べていますが、マクリスタル大将の勧告通りでも、オバマ大統領の決断通りでも、結果はさほど変わりません。大統領はそのことをよく分かっているようです。最初の記事の末尾に書かれている大統領の言葉がそれをよく表しています。「過去8年間にわたってなされた誤りの一つは、我々が戦争に勝ったような感覚を持っていることです。「我々は攻撃できる。尻尾を蹴飛ばせる。輝かしい力の行使だ」といった風潮がありました。事実は、まったく厳しい仕事なのです」。

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