フォート・フッド基地で前代未聞の銃撃事件

2009.11.6
追加 同日16:15

 military.comによれば、木曜日に米本土のフォート・フッド基地(司令 ロバート・W・コーン中将/Lt. Gen. Robert W. Cone)で銃撃戦があり、12人が死亡し、31人が負傷しました。犯人は負傷しながらも生存しています。米軍基地の歴史で最悪の大量射殺事件となりました。

 犯人はニダル・マリク・ハサン少佐(Army Maj. Nidal Malik Hasan)で、銃撃戦は東部時間午後1時30分に、基地内の派遣準備センター(Soldier Readiness Center)で起こりました。ここは、海外に派遣される兵士が説明を受けたり、帰還した兵士が医療上の診断を受ける場所です。ハサンの他、2名の兵士が拘留されましたが、後に釈放されました。動機は明らかになっていません。彼はイラクやアフガニスタンかは不明ですが、海外に派遣される予定でした。ハサン少佐は39歳で、7月にテキサス州の基地に転勤するまでは、6年間、ウォルターリード陸軍病院で精神科医として勤務しました。この病院でハサン少佐は低い評価しか受けられていません。彼は、ヴァージニア州生まれ、独身で、子供はいません。ヴァージニア技術大学を卒業し、在学中にROTC(予備役将校訓練団)のメンバーでした。1997年に生化学の学士号を受けました。医学の学位はベテスダにある陸軍の軍健康科学大学で取得し、2001年にインターン、研修、研究員となりました。当局は、ハサンが生来の名前であるか、イスラムに改宗するために改名したことがあるかを調査していますが、彼の宗派は分かっていません。派遣準備センターは基地の最もポピュラーな場所のひとつで、兵舎とファーストフード店がある食堂センターの近くにあります。銃撃戦が起きたとき、近くでは海外派遣中に大学課程を終えた兵士の卒業式が行われていました。卒業式に出席していた兵士は、背中を撃たれた兵士が走ってきて、銃撃を知らせたと証言しています。

 ほかに事件の状況も書かれていますが、事件の本質を考える上では特に重要とは思えないので省略しました。まだ、被害者の氏名も完全に公表されていないほど、現場は混乱しているようです。いま分かるのは、前代未聞の事件が起きたということ。少佐という中堅将校による犯行である点で衝撃的な事件だということ。容疑者がイスラム風の名前であることから、アメリカの対テロ戦争に対する不満が爆発した可能性が考えられるだけです。ハサン中佐がどんな銃器を使ったかも分かっていませんが、犠牲者がこれだけ多い以上、自動小銃などの連射機能を持つ銃器しか考えられません。比較的大きな銃をどうやって人知れず基地内へ持ち込み、現場へ運んだのかが分かりません。基地内では脱包が原則で、警備についている兵士しか弾の装填が許されません。(訂正及び追加 他の報道によると、ハッサンはセミオートマチック式の拳銃を2丁だけ持っていたようです。セミオートマチック式は1回引き金を引くと、弾が1発発射され、次弾が自動的に装填される仕組みです。これで、こんなに大勢を撃ったとは驚異的です

 米軍基地内では、多くの流血事件が起こっています。ゲイの隊員が勤務中に同じ基地の隊員に射殺された事件は何度も起きています(記事1記事2)。女性兵士の15%が基地内で性的虐待を受けているという報告もあります(記事はこちら)。嫌いな上司をクレイモア地雷で吹き飛ばした事件もありました(記事はこちら)。自衛隊でもたまには同種の事件が起こりますが、米軍での事件に比べると比較にならないほど少数です。なぜ、米軍でこんなに多くの事件が起きるのかが不思議です。

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