タリバンとアルカイダが他地域で再結集

2009.11.30

 military.comによると、パキスタン北西部で戦闘を続けるタリバンとアルカイダの戦士は南ワジキスタンでの戦闘を回避して、再結集しています。記事には各地域ごとの状況が書かれています。

クラム(Kurram)

 当地の武装組織が民兵組織に編入され、バダマ(Badama)とタインド(Taindo)で治安作戦を実施。シャホ地区(the Shaho region)のタリバン訓練所を確保し、戦士の行き来を防ぐために、隣接するタリバンの拠点であるアーカザイ地区(Arakzai)とのルートを切断したと主張しました。クラムの組織はシャホ地区で軍の車列が待ち伏せされた後で開始され、同組織は地元と外国人の戦士多数を捕虜にし、隠れ家とトンネル多数が集中する地域を破壊したと主張しています。軍が南ワジキスタンのメスード部族地区(the Mehsud tribal area)で作戦を実行中に、タリバン、アルカイダ、中央アジアの戦士はクラムで再集結し、地元のタリバン指揮官と長老はテロリストのために家を提供しています。ロスアンゼルス・タイムズは、テロリストたちが山中や麓の高地に隠れ家を作ったと報じました。地元民は、彼らは顔立ちから外国人であり、アラビア語や英語を話している、と言います。指揮官は地域の有力者の家に滞在しています。ある地元民は、彼らが家に来て脅迫し、長老を誘拐し、車を盗み、抵抗する手段もなく、助けてくれる政府もない、と言います。

アーカザイ

 パキスタン軍は空爆と砲撃を継続。チャパーフェロゼケル地区で5人、アラカザイ地区の隣のシャクケール地区と隣接するハングで10人を殺害。タリバン指揮官は南ワジキスタンから来た戦士とその家族に空家を提供していると言います。地元の指揮官は、自分たちがパトロールに行く時、タリバンは常に共に行動していると述べます。タリバンは長老と接触し、長老は彼らが滞在するのを許しています。別の指揮官も、タリバンは常に一緒で、彼らは自分たちの許可がないことは一切しないと述べます。

カイバル(Khyber)

 ラシュカ・エ・イスラム(Lashkar-e-Islam)の戦士15人が、ランディ・コータル地区(Landi Kotal)でヘリコプター攻撃で死亡しました。軍はラマリー(Mamary)、シャヒーダ・キリ(Shaheeda Killi)、メリ・ケール(Meri Khel)を支配下に置き、大量の武器を押収しました。軍は自爆攻撃と隣接するペシャワール市への攻撃を阻止するため、3日前にバラ(Bara)とカンディ・コタル(Landi Kotal)でシュカ・エ・イスラムに対する攻撃を再開しました。南ワジキスタンから北戦史は、ジャムド(Jamrud)、ランディ・コータル、ティラ峡谷(the Tirah Valley)に定着し、ペシャワールとNATO軍の補給路を狙っています。2008年に4回行った作戦で、軍はカイバルからラシュカ・エ・イスラムとタリバンを掃討したと主張しましたが、テロ組織を排除するのに失敗しました。現在の攻勢は規模と範囲において同様に制限されており、懲罰的な性質のものであるとみられます。ランディ・コータル地区には、この地域を安定させるにはほど遠い、200人の兵士しかいません。

バジョールとモマンド

 他地域で掃討作戦が行われる中、タリバンは政府指向の部族長の暗殺を続けています。バジョールでは、パキスタン政府の有力な味方とみられていたシャプア・カーン(Shahpoor Khan)がIED攻撃で死亡しました。タリバンは昨年、カーンの前任者も自爆攻撃で殺しました。モマンドでは、地元の平和委員会の長、マリク・アミル・サイド(Malik Amir Said)が自宅で襲撃され、誘拐されました。彼の息子はこの攻撃で死亡しました。今年3月にパキスタン軍は作戦後にバジョールとモマンドでタリバンを打倒したと主張していました。

 以上を見ての通り、前から心配していたような展開で、コメントするのも気乗りしませんが、こんなことを何度繰り返せば事態が進展するのかと言うべきでしょう。山中に陣をしくのには大変な資材を必要とします。かつて極左学生が山にこもったことがありましたが、まったく意味のない努力であり、苛酷な環境の中で、彼らは愚かにも味方の半数を粛正で殺してしまいます。しかし、タリバンがやっているのは、明らかに周辺地域の協力がなければできないことで、これだけの背後を持つ勢力を掃討することが難しいのは説明を要しません。これだけ見ても、パキスタン政府の劣勢を感じます。今後は、こうした状況にオバマ政権がどう対処していくかが問題です。来年の秋に同じ後継が繰り返されては、決してなりません。

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