ドイツ軍参謀総長と副大臣が辞任

2009.11.27

 military.comによれば、9月に142人のアフガニスタン人を死亡させたNATO軍による誤爆に関して、国防副大臣ピーター・ウィッチャート(Peter Wichert)と参謀総長ヴォルフガング・シュナイダーハン大将(Wolfgang Schneiderhan)が引責辞任しました。

 国防大臣のカール=テオドール・ツー・グッテンベルク(Karl-Theodor zu Guttenberg)は、シュナイダーハン大将は本人の希望で辞職したと発表しました。この発表は、ビルド・デイリー紙(Bild daily)が、陸軍の機密ビデオと報告書を報じたあとに行われました。報告書によれば、ドイツ軍の現地指揮官ゲオルグ・クレイン大佐(Georg Klein)は空爆を命じたとき、トラックの周りに民間人がいる可能性を排除できていませんでした。このとおりであれば、クレイン大佐の決定は、NATO軍の交戦規定に違反しています。10月31日に公表されたNATO軍の報告書では、クレイン大佐は適正に行動したとされていました。グッテンベルク大臣の前任者、フランツ・ヨゼフ・ユング(Franz Josef Jung)は民間人の犠牲者はいないとしていました。なお、ドイツでは大多数の有権者がアフガンへの連邦軍派遣に反対しています。

 グッテンベルク大臣が辞任しなかったのは、10月の組閣で就任したばかりなので、かわりに副大臣が責任をとったのでしょう。

 ともかくも、話が180度変わり、クレイン大佐が十分に確認をしていなかったという結論が出たようです。それも、内部告発らしい情報源により、マスコミが問題点を指摘した途端、軍のトップが辞めたて分かるという情けなさです。関門海峡でのイージス艦「くらま」衝突事故で、当初、「くらま」の早すぎた速度が隠蔽されたように、軍はこうしたミスを隠しがちです。私も、嘘をついても、すぐにばれるような速度に関して、海上自衛隊が虚偽の報告をするとは考えませんでした。しかし、こうした問題はしばしば起こるものです。特に戦争中には、勝つことが重要であり、細かいことは無視されがちです。よって、誤爆事件のような問題は軽視され、敵に批判の材料を与えるなという考えの上に、隠蔽されやすくなります。対テロ戦争でも、さまざまな事件が隠蔽され、後で発覚すると言うことが繰り返されてきました。特に、発展途上国での戦争では、先進国は潜在的な差別意識から、現地人の人権を無視しがちです。

 それにしても、こんなことをやっているのでは、アメリカが2003年にイラクに侵攻してから何度も聞かされたミスから何も学んでいない、何の進歩もないという点で、絶望的な気分になります。 誤爆は何度も聞かされた話ですし、昨日紹介した、車を運転州の民間人が国際部隊の攻撃で死ぬ事件も、うんざりするほど見てきました。マクリスタル大将が戦略を変更してもなお、この種の事件を根絶できないのでは、もはや希望はありません。いくら欧米が、自分たちはアフガンの味方だと言ったところで、信じる人はいません。

 なお、military.comによれば、オバマ大統領は来週の火曜日にウエストポイント士官学校において、アフガンの新戦略を発表します。当サイトでは、アフガン戦に軍事的勝利はないと言い続けてきましたが、オバマ大統領が、新戦略が「出口戦略」であることを明言する予定であることが明らかになっています。大統領が戦いの本質を見誤っていなかったことは幸運です。当初、時間をかけて討議しているので、大統領が細かい指示を出したがっているようにも見えましたが、杞憂であったようです。しかし、この戦略変更はこの戦いの中では、大きな問題ではありません。問題は次にどうやってアルカイダを封じ込めるかです。これについては、誰も確たる手を見出せていません。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.