アフガン派遣兵の士気が低下

2009.11.14

 military.comによると、アフガニスタンにいる米兵の士気が低下する一方で、暴力の大幅な低下につれてイラクでは精神衛生が向上しています。

 米陸軍が行った最新の研究によると、この研究がスタートした2004年以来、イラクでは兵士の自殺は増加していません。海外派遣が3回または4回になる兵士のモラルは、より派遣回数が低い兵士よりも士気が低く、精神上の問題をより多く抱えており、結婚生活に問題を抱える兵士も右肩上がりです。アフガンにいる兵士の鬱病、不安神経症、その他の精神的問題は2007年中とほぼ同じです。しかし、研究はオバマ大統領が始めている20,000人以上の増派をのため、精神衛生に携わる人たちが不足することも指摘しています。この努力は先日の乱射事件でいくぶん妨害されました。死傷者の幾人かは、兵士の精神療法を増強するために派遣されることになっていました。部隊の士気レートは2005年や2007年よりも大幅に低下したと、金曜日に発表された報告書のサマリーは述べています。イラクでは、無作為に選んだ小隊の兵士約2,400人が、2008年12月〜2009年3月まで調査票に記入し、精神衛生評価チームは2月末に結果を分析し、面接や抽出したグループによる討議をはじめるために1ヶ月間戦地に行きました。アフガンでは、4月〜6月まで50以上の小隊の1,500人以上の兵士が調査票に記入し、評価チームが同じプロセスを5月〜6月まで行いました。精神衛生を提供する人たちも、それぞれの国で面接を受けました。こうした調査は2003年にはじまり、6回行われており、兵士の健康を調べるための最大の努力です。今回の調査は、戦闘で交戦する戦闘部隊と航空部隊や工兵、医療など後方支援部隊の異なる2種類の小隊をサンプルとした点で過去と異なっていました。報告書は以下の事柄も見出しました。

  • 年若の兵卒は下士官よりもかなり多く結婚生活に問題を抱えています。彼らは離婚するつもりであったり、配偶者が不貞を働いていることを疑っています。
  • 戦闘にさらされることは、精神衛生問題の重要な要素として認識されていますが、それは2005年のレートよりも今年はかなり高く、2007年の戦闘部隊のレートに近い値です。
  • 戦闘部隊においては、派遣期間の最後の6ヶ月間に士気が大きく低下し、長期派遣によるうんざりした感情に関してより多くの証拠があります。
  • 3〜4回派遣された兵士は、1〜2回派遣された兵に比べて、非常に多くの激しいストレスと心理上の問題、結婚している者においては、結婚生活の問題を抱えています。
  • 3〜4回派遣された兵士は、精神治療薬を使ったり、最初の派遣時よりも戦闘ストレスの問題が極めて高くなっています。
  • 沢山の前哨基地が入り組んだ地形に分散しているため、2005年よりも今年は問題行動の治療を受けるのが極めて困難でした。
  • 対処法として、2〜4時間、テレビゲームで遊んだり、ネットサーフィンをした兵士は心理上の問題を低減させましたが、さらに3〜4時間それをやった場合は逆効果でした。エクセサイズやその他の身体トレーニングを行った者は、費やした時間に関係なくメンタル問題を低減させました。
  • 陸軍は、軍の精神衛生に焦点をあてた、前例のない、この数年にわたって増加させてきた、より多くの、より良質の自殺防止やその他の精神衛生プログラムを報告しました。
  • アフガンの精神医療システムは兵士700人に治療スタッフ1人という陸軍のドクトリンに基づき、人手が不足しています。

 そろそろ、アフガンに派遣された兵士にも限界が来ているようです。このことは、私もかなり前から「もう限界だろう」と言ってきました。いまははっきりと、「もう限界を超えている」と言うことができます。まもなく、この戦争は十年目を迎えますが、ほとんど前進が見られないことにも、精神的トラブルを増す原因があります。すでに、方針を大きく変更すべき時に来ています。このような状態にならないように戦略を適切に組み立てる必要があったのですが、ブッシュ政権の選択はあまりにも愚かで、世界で最高の軍隊を自ら消耗させてしまったのです。いくら繰り返しても足りないことですが、軍隊の活動が大きな成功を収めるのは、極めて限定された局面であり、それを外した場面で用いても、あるのは損害だけなのです。

 今回の報告では、具体的な対策による結果の違いが示されており、軍が対策に力点を置いていること、それだけ問題が拡大していることが分かります。派遣期間の最後の6ヶ月に大きな士気低下がみられること。アフガン全土に前哨基地が分散したため、治療が受けにくいこと。テレビゲームやネットサーフィンよりも、身体トレーニングが効果があること。これらは問題を改善するためのヒントとして参考になります。しかし、根本的な対策はストレスを持つ者を、ストレスの原因から引き離すことです。アフガンのような過酷な戦場で、これを実現するのは、ほとんど無理です。

 以前から気になっていることですが、タリバン兵士にも、こうした精神的トラブルは起こるはずです。その中身を米軍兵士と比較したら、どんな結果が出るのかが気になります。もっとも、これは調査のしようがないので、永遠に明らかにならないでしょうが、非常に興味が湧くテーマです。タリバンはそうした兵士にどんな対応をしているのでしょうか。「信心が足りないから気が狂うのだ」という素朴な結論で済ませているのか、何か治療を施すのかが知りたいと思っています。

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