今年、アフガンの負傷者が急増

2009.11.12

 military.comによれば、アフガニスタンで負傷する米兵の人数は1年前の10月と比較して、4倍近くに増加しています。

 身体の切断、火傷、脳外傷、金属片による負傷がアフガンで拡大しています。米軍を狙ったIED、狙撃手が放った弾丸や迫撃砲の砲弾が原因です。防衛・退役軍人脳外傷センター(the Defense and Veterans Brain Injury Center)によると、2007年以来では70,000人以上が、今年だけでは20,000人以上の軍人が外傷性脳外傷と診断されました。障害の多くは軽度ですが、頭痛や集中力低下のような症状があります。今年最初の10ヶ月間で少なくとも1,800人の米兵がアフガンで負傷し、これは同時多発テロ以降、アフガンで負傷した米兵の40%にあたります。このうち1,000人近くは、過去3ヶ月間に負傷しました。イラクでは、今年600人以上が負傷しました。現在、IEDは両国で米兵を最も多く殺しています。ISAFの広報部長、ウェイン・シャンクス大佐(Col. Wayne Shanks)によれば、アフガンでは過去4ヶ月にIEDを作る爆発物とIEDが共に増加しました。彼はアフガンでは6人に1人が背骨に関する負傷の治療を受けていると言います。これらの負傷者の約15%は、背骨骨折や脊髄外傷のような信号伝達細胞や感覚の変化に関係しています。

 ほとんどの障害が軽度だから大した問題だと考えるべきではありません。頭痛や集中力低下をこうむるだけで、すでにかなりの職業への適応性がなくなってしまっているのです。たとえば、運送会社はこうした障害を持つ人をドライバーとして雇いたいとは思わないでしょう。交通事故を起こすことを恐れるからです。こうした人は自活できたとしても就職できないので、生涯にわたって生活を保障してあげなければなりません。こうした費用が戦争の後に、国家に重くのしかかってくるのです。就職できない軍人がホームレス化する問題は、米政府が対策に乗り出すほどの規模になっています。この記事にはRPG攻撃による負傷を取り上げていませんが、私はそれも原因のかなりの割合を占めると考えます。というのは、タリバンが戦術を変えてきていることに気がつくからです。

 イラク戦から継続的にニュースをチェックしている人なら、現在のアフガンがかつてのイラクと状況が似ていることに気がつくはずです。劣勢の武装勢力は、効果があると見た戦術に強く傾倒し、同じ戦術を採り続けます。IEDによる攻撃がそうですし、小火器だけでなく、RPGを大量に用いて、歩兵を圧倒し、戦局を有利に展開する戦術を、タリバンは好んで使用するようになっています。オバマ大統領が増派を決めた後、来春にはこの傾向がさらに強まり、その結果が報告されるようになると予測するのは難しくありません。この先の展開は、なるようにしかならないのです。

 なお、military.comによると、先日アフガン西部で川に流されて行方不明になった空挺隊員2人のうち、1人の遺体が発見されました。もう1人の捜索が続けられています。捜索の第一日目に、武装勢力による攻撃があり、アフガン兵8人、アフガン警察官3人、通訳1人が死亡し、アフガン兵17人と米兵5人が負傷しました。アフガン国防省は現時点で、死傷者は戦闘の最中に行われたNATO軍の空爆によるものとみています。また、南部ではNATO軍の輸送隊が襲われています。これが米兵が食糧の箱を取りに川に接近した原因である補給不足と関係があるかは不明ですが、非常に気になる情報です。


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