アフガン情勢で見解の相違が浮上

2009.10.8

 military.comによると、オバマ政権はアフガニスタンにおけるアルカイダのプレゼンスが減少したと考えています。

 ジェームズ・ジョーンズ国家安全保障担当大統領補佐官(U.S. national security adviser James Jones)は、先週、アルカイダのプレゼンスが減少し、タリバンの権力回復を予想しないと述べました。彼は最大に見積もっても、アフガン国内にいるアルカイダ戦士は100人よりも少なく、基地もなく、欧米を攻撃する能力を持たないと述べました。「タリバンが権力に回帰しても、我々は強力で信頼性のある処罰、インド、中国とロシアのような地域的な同盟者によって、再び我々を攻撃することから妨げるに十分な力を持っています」。

 これに対して、様々な反論が記事に紹介されています。テロ組織のウェブサイトをモニターしているマサチューセッツ大学のブライアン・グリン・ウィリアムス准教授(Bryan Glyn Williams, a University of Massachusetts associate professor)は、パキスタン国境の向こう側を含めたアフガンの多くの州に多数のアルカイダ戦士がいる報告を集めています。3年間、オサマ・ビンラディンを追跡した前CIAアナリストのマイケル・ショイアー(Michael Scheuer)は、オバマ政権は、この組織が後方支援や宣伝、地元同盟者の訓練を好むことから、アフガンのアルカイダの役割を過小評価したかも知れないと述べています。一部の専門家はアフガンにいるアルカイダの戦士は、東アフガンとパキスタンで攻撃を行っているラシュカル・アル・ジリ(Lashkar al-Zil)、またの名を「影の軍隊(Shadow Army)」を通じて活動していると考えられています。前出のウィリアムスは「私の私見では、ラシュカル・アル・ジリのアルカイダ戦士は、北部のヌリスタン州(Nuristan)から南部のヘルマンド州(Helmand)までの、すべてのタリバン戦線で活発に関与しています。外国人は最近の聖戦では重要な役割を演じていませんが、アルカイダは確かにそこにいます」と述べています。国連におけるアルカイダとタリバンのウォッチャーであるリチャード・バセット(Richard Bassett)は、「アフガンは誰も完全な敗者にならず、完全な勝者にもならない、話し合いと取引の基本が常に機能する複雑な場所です」と述べています。

 バイデン副大統領が、攻撃の対象をパキスタンにいるアルカイダに集中するという方針変更を主張したのには、ジョーンズ補佐官が述べたような認識があるためかも知れません。私が最初に考えたアルカイダ対策はこのバイデン副大統領の考えに近いものでした。しかし、アメリカはイラクに侵攻し、そこで地元武装勢力との戦いを選択し、イラク国民を武装勢力から引き離すために、イラクの民生を根本から改善するという、より大きな活動を余儀なくされました。これがアフガン戦にも、そのまま持ち込まれてしまい、本来のアルカイダ掃討よりもアフガンの民生向上が眼目となってしまっています。私はこうした危険を予測して、アルカイダだけに攻撃を集中する方法がよりよいと考えました。しかし、事態はすでに別の方向に走っており、もはやリセットすることはできそうにありません。もっとも、方針変更を利用して、アフガンでの活動をうやむやの内に終わらせてしまう方法は有益かも知れません。そうしてアフガンから足を抜いて、あとは民生活動によってアフガンを支援していく方法は、狡いやり方であっても、今よりはマシかも知れないのです。

 しかし、オバマ政権と専門家たちの意見がこうも食い違うのが気になります。前から指摘していますが、イラク戦と比べるとアフガン戦は情報が不足しています。イラク戦ではもっと状況が分かりやすかったのに、アフガン戦は記事を読んでも状況はよく理解できませんでした。我々と違って、国家の中枢にいる人たちは、軍や情報機関が集めたレポートやその要旨を読めるはずで、我々ほど阻害された環境にはないのでしょうが、それでもこれだけ見解が食い違うのには、やはりアフガン戦に関する情報は不足しているのかと思ってしまいます。こうしたところから、オバマ大統領がマクリスタル大将の意見を理解できずにいるのかどうかが気になります。


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