マクリスタル大将の発言が物議を醸す

2009.10.7

 military.comによれば、アフガニスタン戦略に関するスタンリー・マクリスタル大将(Gen. Stanley McChrystal )の発言が物議を醸しています。

 マクリスタル大将は先週、オバマ大統領と机上会議を行う前日に、ロンドンで聴衆に対して、「アフガン戦略をアルカイダに対抗できる国の建設を重視する用兵からテロリストを標的としたより集中度の少ない用兵の手法に狭めることは、恐らくは近視眼的だ」と述べました。この発言はマレン統合会議議長とペトラエス中東軍司令官によって支持されました。しかし、これは憲法が定めるシビリアンコントロールに違反するとの声があがっています。ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)はこのアドバイスは非公開にすべきだと述べました。「このプロセスにおいて、我々のすべてがこれらの討議の一部を、民間人と軍人が同様に分担し、率直にそして非公開で最高のアドバイスを大統領に提供することが絶対に必要です」。レーガン政権時の国防相高官で、現在は「米国進歩センタ−(the Center for American Progress)」のアナリストであるラリー・コルブ(Larry Korb)は、マクリスタル大将は質問に答えるべきではなかったのであり、シビリアンコントロールに違反したと述べました。

 これから大統領が決定することに関して、軍人が公言することが好ましくないのは当然です。マクリスタル大将は増派がなければ自分が構想している戦略が実現できないと考えて焦っているようですが、私は別の見方をしています。現状はマクリスタル大将だけでなく、どんな戦略家が手をつけても覆しがたい状況となっています。現在行っている努力は大きな成果とはならず、各国は莫大な費用に耐えられなくなって、いずれ兵を引き上げることになります。太平洋戦争末期、硫黄島の守備隊指揮官となった栗林中将に、兵站(補給)参謀が「間もなく日本は敗北しますから、降伏しても閣下が罪に問われることはありません」と進言したという話があります。私はマクリスタル大将にこう助言したいところです。よく言われるように、戦略の失敗は戦術で覆せないのです。栗林中将は全力で防衛戦にあたり、命を落としました。マクリスタル大将が私の話を聞くとは思えませんし、軍人らしく最善を尽くそうとするでしょう。しかし、すでに勝利を得られる限界点を過ぎています。これからの軍事行動はこの戦いの幕引きを意識したものにすべきです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.