ソマリアでの洋上給油はナンセンス

2009.10.28

 昨夜、海上自衛隊の護衛艦「くらま」が関門海峡で重大な事故を引き起こしました。衝突部位や目撃証言からは奇妙な衝突だという印象がありますが、初期情報だけでは何とも言えません。この事故も重要ですが、先に防衛省がソマリアの海賊対策の艦船に洋上給油を行うことを検討している問題を取り上げます。

 実は、26日、私は北沢防衛大臣にメールで私見を送っていました。それは洋上給油の代わりに、アフガンで自衛隊が活動することを検討していると報じられたからです。アフガンに自衛隊を派遣して復興支援活動を行うことの問題点を指摘するのが目的でした。すると、27日にソマリアの海賊対策に派遣することを検討しているという報道がありました。私はこれにも反対です。そこで、これもメールで指摘することにしました。以下は、そのメールの全文です。厳しい表現も用いていますが、この問題はそういう表現を用いるに相応しい重大な問題だと考えています。


アフガニスタンに自衛隊を送らないでください
2009.10.26送信

北沢俊美防衛大臣

 先日、報道で自衛隊がアフガニスタンで支援活動を行う可能性について、これから検討することを耳にしました。私は以下の理由により、これに反対です。

 現在、アフガニスタンでは武装勢力が米軍、NATO軍と激しい戦闘を繰り返しています。米軍とNATO軍はそれぞれが別の法的根拠に基づいて派遣されているのに、武装勢力はいずれをも区別せず、激しい攻撃を行っています。先日、ワシントン・ポストが公表した米軍研究所の研究報告書(*1)を読む限り、タリバンは米軍に対して死を厭わない近接戦闘をしかけています。このような状況下に自衛隊を置けば、戦闘服やヘルメットといった自衛隊員の姿は他の軍隊と同じだと武装勢力の目に映り、攻撃対象になるのは間違いがありません。現状では、自衛官にた国連軍の姿をさせても同じことです。タリバンは以前から国際支援組織は、祖国を侵略しようとする西欧の手先と見て、攻撃してきました。同時多発テロ以降、国際支援組織がテロ攻撃の対象になることが増えています。イラクでは2003年に赤十字国際委員会の現地本部が爆弾による攻撃を受けています。2008年には、ペシャワール会の伊藤和也氏が犠牲になりました。軍隊ではない民間組織までが攻撃を受ける状況に、戦闘服を着た自衛隊員を派遣することは、タリバンの攻撃意欲を増やすばかりです。特に、前述の報告書によれば、タリバンは戦闘中に敵要員の身体を拘束する戦術を採用しています。目的は捕まえた敵要員をビデオ撮影し、宣伝に使うのです。こうして拉致された者が解放される可能性は極めて低く、撮影後に殺害されると考えられます(民間人が釈放された事例はあります)。自衛隊員をアフガニスタンに派遣するのなら、こうした事態を覚悟する必要があります。かかる悲劇を防ぐために、支援部隊を援護する大規模な戦闘部隊を一緒に派遣することで対処できるでしょうか?。部隊の大小は攻撃の可能性とは関係がないと見るべきで、タリバンはむしろ小さな部隊を選び、大部隊で確実に破壊する戦術を採用しています。これは、西欧の軍隊が支援火器(榴弾砲・攻撃ヘリ・爆撃機など)を多く持ち、同じ場所で長時間戦うと、これらの支援火器による攻撃を受け、大損害を受けることを経験から知っているためです。

 交戦権を放棄しているといっても、自衛隊は自軍から見える範囲で友軍が攻撃されている場合、その友軍を支援するために戦闘活動を行うことができます。これは集団的自衛権を発動するまでもなく行えます。常識的に考えれば、目の前で友軍が攻撃されているのに、黙って見ているわけにはいきません。この結果、自衛隊は武装勢力との戦闘になし崩し的に引きずり込まれていきます。たった一度の戦闘で、日本と武装勢力は交戦状態に入るのです。また、派遣する自衛官の中に、積極的に戦闘に巻き込まれようと考える者がいれば、こうした事態は簡単に生じます。これによって、自衛隊が海外で戦闘活動を行うことが既成事実化し、平和憲法が骨抜きになる危険があります。

 支援は文民によって行い、日の丸が箱にプリントされた物資をアフガニスタンに大量に送り、アフガニスタン人に日本が味方であることを教えるような活動の方が数倍効果的です。「自衛隊を出さなければ、国際社会から爪弾きになる」といった意見に与するべきではありません。こうした意見は、単なる感情論に過ぎず、何の軍事的考察も経ていません。

 なお、余談ですが、米軍のグアム移転計画が決定せず、予算も膨れあがっているという報道があります(*2)。今回のロバート・ゲーツ国防長官の訪日には、難航する移転計画を進めるために、早く日本の返事をもらいたいという米軍の思惑があると見るべきです。普天間基地問題を考える上で、米軍のグアム移転計画を調査する必要があると感じています。

*1
http://spikemilrev.com/news/2009/10/22-1.html

*2
http://spikemilrev.com/news/2009/10/26-2.html


ソマリアの海賊対策のために洋上給油を行うことの問題点
2009.10.28送信

北沢俊美防衛大臣

 報道によると、防衛省はソマリアの海賊対策に従事する艦船に洋上給油を行うことを検討しているとのこと。ソマリア沖へ海上自衛隊を派遣するくらいなら、インド洋で洋上給油を続けた方がマシです。私は以下の理由で、これに反対です。

 ソマリアの海賊は小型のスキフに船外機を取り付け、小火器を使って商船を襲います。この程度の武装集団に対処するには必要以上に強力な海軍の艦船が、各国の思惑によって集結しています。それは世界に、自分たちが新しい脅威に対処していることをアピールするためといった理由があります。海賊による被害が続出したとき、各国はそれが対テロ戦争の延長であるかのように、競い合って艦艇を派遣しました。沿岸で海賊の取り締まりを行うのなら、もっと小型の艦艇を数多く用意する必要があるように思われますが、各国は大型の艦艇を派遣しただけで済ませています。これは外交上の目的のために行われているとしか思えないのです。今年、ソマリアは海軍を創設しましたが、その規模は僅かで、海賊の勢力を大きく下回っています。彼らを増強して、自分たちの力で海賊を取り締まれるようにしようという努力こそ必要です。それを、当面の対処に過ぎない取り締まりのための給油で済ませるというのは、問題の本質を無視しているとしか思えません。

 また、そこへ民間軍事会社が新しい市場と見て、警備艇を造って参入しようとすらしています。ここは新たな戦争ビジネスの場なのです。こうした場所へ自衛隊を投入することは、平和国家である日本に相応しくありません。

 海賊そのものは単なる犯罪組織で、アルカイダのように危険ではありません。しかし、ソマリアにはかねてよりアルカイダが入り込んでいることが明らかになっていますし、地元のテロ組織「イスラム法廷連合」も存在します。今年9月、ソマリアで所属不明の戦闘集団が車列を攻撃した事件は、1988年にケニヤとタンザニアの米大使館攻撃に関与したとされるアルカイダの戦闘員、サレハ・アリ・サレハ・ナブハンを米特殊部隊が暗殺したものであると「Long War Journal」は報じています(*1)。こうしたことから、今後、単なる海賊対策であった問題が対テロ戦争へ発展する可能性は十分にあります。いま、アメリカはアフリカ方面を担当する部隊を、書類の上だけの存在から実働部隊へと変化させようとしています。これは、この地で将来、アメリカが戦争をする可能性を示唆しており、自衛隊が今からそれに参戦した既成事実を作るなら、いずれ自衛隊はアフリカで戦闘活動に従事することになるでしょう。

 この案は海上自衛隊が勧告したものと思われますが、単に、これまで行っていた活動を続けるために理屈をつけているに過ぎません。自衛隊の活動は、ダムを造り続けなければ利益を確保し続けられない建設会社の活動とは違います。自衛隊は特定の任務を続けなくても、単に国民に報告できる、「華」のある話がないというだけの話で、決して倒産しないのです。意味のない任務を、こうした理由のために続けたいという海上自衛隊の主張は「わがまま」にすぎないとして却下すべきです。そのためにシビリアンコントロールが存在するのです。

 さらに言うならば、看板を取り替えて既存の活動を続けたいというような、思考が停止したアイデアしか出せない海上自衛隊には苦言を呈するべきです。世界のどこかの紛争地域に首を突っ込んでいれば、自分たちは安泰だと考える程度の自衛隊なら日本に必要ありません。自衛隊は「世界平和」を追求するために、自らがどうあればよいかを考え、斬新なアイデアを出せるくらいであるべきです。幕末浪人ではあるまいし、仕事を求めて紛争の周りでチョロチョロするだけの自衛隊なら、消滅した方がマシです。

*1
http://www.longwarjournal.org/archives/2009/09/senior_al_qaeda_lead_7.php


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