普天間基地移転で民主党内閣が混乱

2009.10.25

 昨日は、パソコンのメンテナンスと日本ハムvs楽天の決定的な試合が重なり、更新できずに終わってしまいました。そこで本日、更新を行います。普天間基地の名護市辺野古沿岸部への移設に関して、岡田外相と鳩山総理の相矛盾する発言をアメリカのメディアが報じています。

 military.comによると、岡田外相はオバマ大統領の訪日までに問題を解決するのは困難だけど、基地を沖縄の外に移転する案は選択肢にないと述べました。また、問題は早く解決されるべきで、日米両国の関係が悪化しているという見方を避けました。一方、ワシントン・ポストは、鳩山総理がオバマ大統領の訪日が問題解決の締め切りではないと述べ、岡田外相の「県外移転は難しい」という発言については「(県外移転は)ないということではない」と述べました。ワシントン・ポストはこの発言を「Saying it is difficult is not the same as saying it is out of the picture.」と、少し長めに英訳しています。また、朝日新聞が土曜日に、政府は米政府案に合意するだろうと報じ、産経新聞はオバマ大統領の訪日時に、政府が年末までに問題を解決すると発表すると報じました。また、鳩山総理が私が最終決断をすると述べたこと。沖縄の人たちの気持ちを尊重すると述べたことも報じています。

 military.comの記事のタイトルは「Japan FM: US Base Should Stay on Okinawa」で、岡田外相が実際の意味よりも少し強めに県内移転を主張した印象に書いています。ワシントン・ポストはおおむね正確に事実関係を伝えています。しかし、鳩山総理が「選択肢を新たに調査している段階だから、当然それなりの時間はかかる」と述べたことは書いていません。北沢防衛大臣も時間をかけるべきではないとの意向で、鳩山総理だけが時間をかけたいと主張しているのです。一連の発言はタイのフアヒンで同行記者団に対してなされました。ワシントン・ポストの記事はロイター通信のニシカワ・ヨーコ記者が書いたもので、多分、同行記者団の一員だったはずです。全体として、米政府の意向をマスコミが代弁している印象です。

 米側は普天間に滑走路を新設する案を提案しており、嘉手納基地への移転は選択肢の中にあるものの望んではいません。鳩山総理が望んでいるのは県外移転で、これにはグアム基地への移転が想定されています。民主党のマニフェストには「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」と書かれており、マニフェストを守る観点からは、これが最も望ましいことになります。しかし、鳩山総理が「選択肢を新たに調査」というのが何を意味するのかが推し量りにくいところです。まったく別で、米側が満足するような選択肢を見つけることは困難でしょう。それは米軍が基地に求める機能をすべて理解した上でないと立案できないものだからです。そのために民主党が元米軍高官など、米軍の要望に詳しい専門家に意見を求め、米政府(実質的には海兵隊を中心とした米軍筋)が納得するような案を提示するとは考えにくいものがあります。というのは、そういう選択肢について、米軍は既に多くの可能性を検討しているはずだからです。提案を出しても、「この案では軍の目標を達せない」と反論されては終わりですし、そうなる公算が非常に高いのです。一方で、アメリカの民主党政権は日本の民主党政権とうまくやっていきたい訳で、米軍の鼻息には閉口しているかも知れません。実は、オバマ政権とて巨大な国防総省を説得するのは難しいのです。アフガン増派とは違い、基地移転問題のような事案を、政治レベルでひっくり返すのは、現代の政治システムに馴染まないのです。

 第一、マニフェストに書くのなら、民主党は事前に案を考えておくべきなのに、今になって新案を一から検討している点が疑問です。すると、これはやはり時間稼ぎで、来年1月の名護市長選挙の結果を待つという作戦かと思えますが、鳩山総理はどうしても選挙の結果を待つとは言っていないとも発言していて、どういう結末になるのかは分かりません。岡田、北沢両大臣が米寄りの動きを見せている点は非常に気になります。すでに、周囲の官僚や米圧に取り囲まれている感じがありますね。

 ゲーツ長官にしても、この問題に関しては多くの理解があるとは思えません。国防総省の説明をそのまま伝えているだけという感じです。記者会見の表情を見ても、借りてきたネコのような印象しかありませんでした。その点、マレン大将の方が数段、この問題に詳しいはずです。

 米軍基地問題を考えるには、やはり軍事に精通する者が運動に関与する必要があります。米軍の動向、意向を調べ、何が可能かを常に探っていかないと、こうした問題を日本に有利な方向へ動かすことはできません。私自身、この問題にはもっと勉強が必要と感じています。

 この他、ディック・チェイニー前副大統領の増派に対する決断が遅いという批判にホワイトハウスが反論した記事(記事はこちら)、NATOが米軍を支援するためにアフガンへの増派を検討している記事(記事はこちら)、パキスタンのタリバン指導者が捕まったという記事(記事はこちら)が目を惹きます。


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