パキスタン軍司令部にテロ攻撃

2009.10.12

 military.comによると、軍服を着た男たちが、パキスタンのラワルピンディー(Rawalpindi)にある陸軍司令部をライフル銃と手榴弾で攻撃し、攻撃者4人と少なくとも兵士6人が死亡しました。この記事はその後に起きた人質事件と特殊部隊による突入作戦については触れていません。

 迷彩服を着た攻撃者は白いバンで正午前に陸軍施設に到着しました。彼らはトイレを使いたいと申し出て、中に入ることを許されました。一つ目の検問所で攻撃者は発砲して兵士数名を射殺、バンから飛び降りると次の検問所に向けて走り出しました。攻撃者少なくとも1個の手榴弾を投げ、散発的に発砲してその付近を制圧しました。パキスタン軍広報官アザル・アッバス少将(Maj. Gen. Athar Abbas)によると、45分間の銃撃戦が起こり、4人を殺害したと発表しましたが、AP通信の記者は、アッバス少将が鎮圧済みと発表した後で、4発の銃声を聞きました。1時間以上経った後で施設から銃声が出たため、アッバス少将は2人が保安部隊をすり抜けたことを確認しました。アッバス少将は兵士6人が死亡し、5人が負傷し、1人は重体だと発表しました。匿名の情報部高官によると、死亡したのは8人です。

 時事通信の記事では、攻撃者たちは人質39人をとって施設に立て篭もりました。同軍は特殊部隊を突入させ、人質を救出しましたが人質の3人と特殊部隊の2人が死亡し、攻撃者4人が殺害されました。

 どうも状況がよくつかめません。しかし、この情報の食い違いは考察に値します。人質を取った段階で攻撃者は4人とも生きていたのか、すでに2人が殺害された後だったのかが疑問です。もし、攻撃者が生きていたのなら、先に死亡したとされる攻撃者2人はもしかすると保安部隊の隊員で、攻撃者と勘違いされて殺害され、間違った報告がなされたのかも知れません。あるいは、military.comの記事を書いたAP通信と時事通信の見解が違うだけかも知れません。

 正門から司令部にテロリストに侵入されたのでは、パキスタン軍にとっては大恥です。自衛隊では当たり前の身分証明書の確認もせずに、部隊内に人を入れるのでは話になりません。現在、パキスタン北西部では大規模な掃討作戦が進行中で、特に警戒すべき時期にありました。しかも、発表した内容と状況が明らかに食い違っているのですから、現場がいかに混乱していたかということです。アッバス少将の発表は毎度あてにならないのですが、今回は特にひどいものでした。


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