ロシアのミサイル配備棚上げは誤報?

2009.1.31



 28日付のspace-war.comは、ロシア軍当局者が、オバマ政権が東ヨーロッパへの迎撃ミサイル配備計画をスピードアップしないのなら、カリーニングラードにイスカンダルミサイルを配備しないと述べたと報じました。これは日本でも報じられました。ところが、globalsecurity.orgが掲載した記事によると、同じ日にロシア軍はこの報道を否定しました。

 もともと、当初の記事には疑問がありました。情報源が匿名の上、情報の出方がいかにもアドバルーン的でした。国内報道には書かれていないようですが、space-war.comの記事には、米国務省の広報官ロバート・ウッド(Robert Wood)が、この話はロシアから国務省に通告されていないと述べたことが書かれています。ロシアが本気なら、米国務省に最初に通知したはずです。私はロシアがアメリカの出方を探ろうとして、情報を意図的に流したのかと思いました。そうしたら、その後、ロシアは情報を否定して見せました。単なる誤報なのか、アドバルーンなのかは分かりませんが、この謎の記事に対して、アメリカとNATOから「本当なら歓迎」との反応が出ました。

 国内報道は先走り、「ロシアのメドベージェフ大統領は4月2日にロンドンで開かれるG20の際にオバマ大統領と初の首脳会談を行う予定で、この問題も話し合われるものとみられます。」とまで書きました。space-war.comには、ポーランドが「匿名の情報源から出た情報だから、まず確認される必要がある」と述べたことが書かれています。

 なお、space-war.comには、軍事コメンテーターのアレキサンダー・ゴルツ(Alexander Goltz)の見解が載っています。「ロシアは配備を停止しておらず、配備を検討してます。現実の配備は何一つ行われておらず、滑稽な声明です」と彼は言います。と述べています。この記事には、ノーボスチ通信社も、ロシア軍幹部の発言として、ミサイル配備は計画だけしか存在しないとの見解を伝えています。

 報道の真相が明らかになるのが一番よいのですが、現段階ではオバマ政権の意向を見るために情報が意図的に流された可能性を考えざるを得ません。


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