イスラエル最高裁が取材禁止を撤廃

2009.1.27



 military.comによれば、イスラエルの最高裁がガザ地区に外国人記者が自由に入れるように命じました。この命令は、ガザ侵攻よりも前から禁止されていた禁止令を無効にしました。

 この裁定は、国境が開いている時は常に記者の通行を許可するよう、イスラエル政府に命じています。最高裁は国境は明確な危険がある場合にだけ閉鎖されるものとしました。ガザ地区は11月初旬から記者の訪問が制限され、12月27日に始まった攻勢の6日後に発せられた、外国人記者に限定的な進入を認める最高裁の命令を無視しました。攻撃が終わったあとで、イスラエル政府は記者の進入を認めました。この裁定は将来のものに対して適用されます。外国人通信員境界の弁護士は、この裁定が、極限状況でだけ限定され得る、基本的権利としての報道の自由と移動の自由の保護を強化すると述べています。

 記事にも書かれていますが、2006年のヒズボラとの戦いでは、イスラエルは記者の進入を制限しませんでした。今回、それを厳しく制限したためにイスラエルに対する報道が厳しくなり、裏目に出てしまったという批評家の見解が記事に示されています。一部のイスラエル高官は、記者がイスラエルに都合の悪い報道をするのではないかという懸念から、取材を制限したと述べています。

 ジュネーブ条約の第1追加議定書は、報道員は原則的に文民として尊重することを紛争当事国に求め、報道員が所属する国に記者であることを証明する身分証を発行することを求めています。戦場からの報道が重要であることが認められ、国際条約でも報道員の立場を明らかにしようとしているのです。

 昨年にはじまったガザ侵攻では、報道員が外から中に入れなかったので、元々、ガザ地区で活動していた報道員が撮影した映像が多く報じられました。その中には白リン弾の映像もありました。また、一般市民が撮影した映像もありました。戦争報道員には民間の報道員と軍の広報部の両方があります。どちらの情報も軍事分析には使えますが、軍の報道はその立場から出られないので、自分に有利なことが多いものです。現在、CNNがiReport.comを立ち上げ、アマチュア写真家が撮影した写真や映像をインターネットで公表しています。ガザ侵攻の映像も検索することで簡単に見ることができます。テレビでは報道しにくい戦争の犠牲者が写った写真もあり、戦争の悲惨さを目の当たりにすることができるのです(負傷者や死体が写っているような刺激の強い写真は、選択しない限りはモニタに表示されません)。この他、NGOが公表している映像も、戦争を知る上で非常に役立ちます。

 驚異的な時代になったと思います。そして、これが戦争を防止する大きな力となることを実感します。人びとが戦争犠牲者の姿を知らないには、国威を鼓舞するような映像だけがもてはやされました。太平洋戦争中、硫黄島に星条旗を揚げる海兵隊員の写真は爆発的に売れたものです。ところが、現在は現場で戦争犠牲者そのものを撮影した映像を、インターネットで見ることができます。こうなると、人びとは戦争の悲惨さを実感せざるを得ず、平和を求める声は一層強まります。考えてみると、今が過去最も平和運動を強化するチャンスがあるのかも知れません。こういう傾向を促進する方法を考えていかなければいけないと感じています。


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