ガザ侵攻はイスラエルの敗北

2009.1.19



 イスラエルが一方的な停戦(18日午前2時に開始)を宣言しました。しかし、これはハマスにつけ込まれる結果となりました。イスラエル軍に一週間で撤退しろという要求を出させる余地を与えたのです。

 イスラエル軍は一部の軍を撤退させたと報じられていますが、おそらく、これは疲弊している一部の兵を引き揚げただけです。監視のために部隊の配備は続けなければなりませんから、ガザ地区から完全に撤退することはできません。停戦期間は元々10日間で協議されていましたが、7日間に短縮されたことも悪材料の一つです。ハマスのウェブサイトは、イスラエルが敗北を認めたと書き、自らの勝利を宣言しています。

 イスラエルの考えはこうでしょう。市街戦をやらなくても、すでに密輸トンネルの多くは破壊し、エジプトやアメリカの協力も取りつけたのだから、ハマスは今後、それほど多くのロケットは発射できません。実質的に戦争の目的を達したとみなして停戦し、市街戦で地上軍に大きな被害が出ることを防いだ方がよい、と。人口の少ないイスラエルにとって、大敗しないことが重要なのは間違いがありません。

 しかし、ハマスはまったく反対のことを考えます。事実、2006年のヒズボラとの戦いと今回のガザ侵攻は、イスラエルには、レバノンもガザ地区も完全に制圧する力がないことを証明したのです。イスラエル軍はほとんどガザ市に入れず、その周辺で戦闘を行ったに過ぎません。これにより、中東全域からハマスに対する称賛が湧き起こり、ハマスに資金と人材が流れ込みます。

 ハマスはイスラエル軍を挑発する行動を繰り返し、イスラエルを再び戦闘に巻き込めます。こうして戦闘を繰り返していくことで、いつの日にかイスラエルの力は衰え、アメリカの支持も減少し、パレスチナの地を取り返すことができると考えているのです。

 エジプトに通じている密輸トンネルの摘発がどれだけ完全に実行されるかは、今後のガザ情勢を考える上で重要です。イスラエルはアメリカがエジプト経由の武器密輸に協力するという約束を取り付けました。問題はこれがどれだけ実行されるかです。エジプト当局が密輸トンネルを完全に摘発すればハマスが物資を運び入れるのは困難になり、今後の攻撃は行いがたくなります。しかし、こうしたエジプトの方針に抗議するために、エジプト国内でテロ攻撃が激化する恐れもあります。そのためか、military.comの記事が、エジプト外相アフマド・アブルゲイト(Foreign Minister Ahmed Aboul Gheit)が、エジプトはこの合意に制約されないと述べたことを報じています。エジプト政府が内外からの圧力に耐えかねて、密輸トンネルの摘発に消極的になることに注意が必要です。

 この停戦は将来の武力対決を招致する可能性が非常に高いと考えます。イスラエルはイランの核開発にも神経を尖らせており、最近、昨年アメリカに地下施設を破壊できるバンカーバスターを要求したことが明らかになっています。数年前なら、イスラエルがイランを爆撃するのは先の話と考えていられましたが、ウラン濃縮が進み、そろそろタイムリミットが迫ってきています。イスラエルが黙っているとは、過去の事例を見ても考えにくいのです。こうしたことが複合的に中東を不安定にする危険が高まっているのです。


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