イスラエル軍がYouTubeで正当性を主張

2009.1.1



 military.comによれば、イスラエル軍がビデオ投稿サイト「YouTube」に、ガザ地区に対する攻撃を撮影した多数の映像を投稿し、自らの正当性を主張しています。

 イスラエル軍は「idfnadesk」という名前を登録しており、現在、2,000の視聴者がいて、10本のビデオを提供し、その一部は20,000回以上視聴されています(私が確認した時点ではビデオの数は16本になっていました)。ビデオには、モノクロの空爆の映像や、ハマスの警備艇がイスラエル海軍の艦艇からのロケット攻撃で破壊される映像などがあります。いくつかのビデオはYouTube運営者により削除されました。イスラエル軍の広報官はこれについて、悲しいことだと述べています。イスラエルに対する非人道的行為と、それを止めさせようとする努力を世界に見せることは必要だと言うのです。

 この記事で紹介された映像は、前述のリンクをクリックして実際に見ることができます。とうとう、国家がYouTubeを利用して自分の正当性を主張する時代になったようです。しかし、これらの映像を見ても、状況は断片的にしか分からず、世界を納得させられるとは思えません。確かに、地下にあるロケット・パッドを破壊し、ロケットがそれによって誤発射される映像は、ロケット・パッドの存在を証明するもので、説得力があります。しかし、こうした事例がどれだけあるのかも示さなければ意味がありません。また、短すぎて、ほとんど意味をなさないビデオもあります。何より、心理戦の一環として行われているようにしか見えないので、逆効果を生みそうです。特に、トラックにロケットを積み込んでいるハマスの戦士を攻撃する映像は、上空からすべて見えているという警告に他ならず、心理的な圧力を加えることに目的があるとしか思えません。


 前日に書きましたが、自衛戦争の正当性を証明したければ、国際法の手法に則って行うべきです。具体的な事実を上げ、それがウェブスター・フォーミュラに合致するかどうかを論証すればよいのです。そのやり方が分からないはずはありません。国際法の分野では、そうした論文が普通に書かれているからです。つまり、それをせずに、ビデオ投稿で済ませているところを見ると、イスラエル軍も攻撃の正当性は主張しきれないものと考えていることになります。

 麻生総理が停戦を希望するという型通りの要請をイスラエル政府に出しましたが、フランスの停戦案はすでに却下され、地上戦は避けられない状況です。水面下で交渉が行われていると報じる記事もありますが、私はそれが成功する可能性は非常に低いと思います。

 military.comの別の記事によれば、イスラエル国防省はハマスの統治能力は著しく弱体化し、武器開発施設は完全に破壊されました。匿名を希望するエジプト高官が、イスラエルは空爆開始後、120本の地下トンネルを破壊したと述べました。控えめな見積もりでは、地下トンネルは空爆前には200本以上あったとされています。

 これだけではトンネルを再建される恐れがあるので、イスラエルは地上戦を行い、トンネルを完全に破壊して、コンクリートで固める必要があります。さらに、二度と使えなくするために長期駐留する可能性もあります。状況から見て、非常に負荷の高い戦闘が近く始まることになる見込みです。


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