謹賀新年:ブッシュ政権の終わりに際して

2009.1.1



 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 今月20日、「ブッシュ政権の馬鹿げた8年間」が終わります。そして、この日をもって、白人男性だけがアメリカ大統領になる時代は終わります。

 清教徒が北アメリカ大陸に渡って以来、彼らがこの地域の社会を主導してきました。アングロ・サクソン系が打ち立てたアメリカには、大量の移民が流れ込みました。このため、アメリカのネイティブとなったアングロ・サクソン系人種が、その他の民族である移民たち指導して社会を構成する構造が生まれたのです。第2時世界大戦の米軍で、将校などの指導的な立場にあったのは主にアングロ・サクソン系で、下士卒の多くは移民の子孫でした。映画「フォレスト・ガンプ」のダン少尉(字幕と吹き替えでは中尉)は、この社会構造を表現したキャラクターでした。ダン少尉の先祖がアメリカの有名な戦いで戦死していることを、少尉を演じたゲイリー・シニーズは、ダンの先祖が戦死する場面を何役も演じ分けて表現して見せました。これは単なるユーモアのための演出ではなく、現実の社会構造を表現するためでした。

 アメリカが人種のモザイクと化したことは、かねてから言われ続けてきたことですが、バラック・オバマがアメリカを代表する大統領の座に就任することにより、この方向は確定的なものとなります。アングロ・サクソン系は、高潔なキリスト教的道徳観でアメリカ社会を引っ張ってきました。しかし、ブッシュ大統領はその責に堪えず、アメリカを誤った方向へ導きました。この点で、彼は父親とはまったく違った大統領でした。

 これはアメリカや世界にとって好機です。世界はいずれ人種の垣根を越えなければならない定めです。戦争が起きる原因は、国家がもっぱら人種単位にまとまっていることに起因しており、戦争を防ぐには、国家という障害物の高さをさらに低くしていく努力が必要です。そのためには、大国アメリカ大統領に誰がなるか、つまりアメリカの有権者の選択に変化が起きる必要がありました。まもなく、それが実現しようとしています。

 しかし、新しい政策が実際に効果を生むまでには、かなりの時間を必要とします。大国アメリカはタイタニック号と同じで、舵を切っても針路が変わるまでには時間がかかるのです。だから、我々はこれからのアメリカを客観的に観察し、どこが進化したのかを正確に判断する必要があります。メディアの報道には、お決まりの評論的報道や前例主義があり、実状を正しく伝えていない場合もあります。こうした報道に流されず、アメリカを、そして世界を、正しく見ていかなければなりません。

付記 1月2日は更新を休む予定ですので、ご了承ください。

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