連邦議員が大統領に名誉勲章を請願

2008.9.22



 military.comによると、名誉勲章を授かる勲功を残しながら、海軍十字章に留まったラファエル・ペラルタ3等軍曹(Sgt. Rafael Peralta)について、名誉勲章を与えるように、地元の連邦議員が動き始めました。

 先日哨戒したように、ペラルタ3等軍曹は味方を守るために武装勢力が投げた手榴弾を自らの体で防いで戦死しました(記事はこちら)。カルフォルニア州選出の超党派議員のグループが、ブッシュ大統領に連名で、名誉勲章を与えることを求めた手紙を出しました。ホワイトハウスは現段階ではコメントしていません。

 通常、名誉勲章の選考過程では、いくつかの結果が選ばれます。

  1. 名誉勲章を与える。
  2. 名誉勲章よりも下位の勲章に変更する。
  3. どの勲章も与えない。

 下位の勲章に変更するのは、選考過程の正当な決定です。しかし、気になるのは、矛盾する証拠があったので、ロバート・ゲーツ国防長官が手順を余計に踏み、委員会に前イラク駐留米軍指揮官1人、名誉勲章受勲者1人、民間の神経外科医1人、退役軍人である法廷病理学者2人からなる委員に評価を求め、委員会は名誉勲章に反対し、ゲーツ長官が決定を下したという記述です。

 矛盾する証拠とは何なのか。追加の委員会の人選の理由は何か。委員会が名誉勲章を却下した理由は何か。気になる点がいくつもあります。

 矛盾する証言は、現場にいた兵士から出されたものくらいしか思いつけません。この名誉勲章はペラルタ3等軍曹の部隊から申請されたと考えられますが、兵士の証言が食い違うというのは妙な話です。確かに、戦死した戦友のために、勲功を誇大に報告するのは耳にすることです。考えられるのは、ペラルタ3等軍曹が手榴弾を抱え込んだ事実はなく、武装勢力が投げた手榴弾によって戦死したのが真相だということです。しかし、この場合だと、海軍十字章を受勲するには至りません。

 医師が3人も選ばれ、その内の2人が病理学者なのは、検死結果に疑問があることを連想させます。病理学者は死者の死因を調べるのが仕事です。たとえば、ペラルタ3等軍曹の遺体に残された手榴弾による傷が、死後に付いたものだとする検死結果があれば、ペラルタ3等軍曹が手榴弾を抱え込んだとは考えられないことになります。すると、この辺が名誉勲章を与えられなかった理由なのかも知れません。

 しかし、そうであれば、やはり海軍十字章は与えられないのが普通です。考えられるのは、証拠の判定が難しすぎ、何の勲章も与えないと、可能性がある武勲を評価しないことになり、妥協案として海軍十字章が選ばれたということです。すると、この事件は今後尾を引きそうです。


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