タリバン式処刑が復活

2008.8.8



 タリバンが復活している様子を、military.comが報じました。ガズニ州(Ghazni province))で、AP通信に協力するアフガニスタンの記者が、タリバンの戦士が米兵相手に売春行為をした2人の女性を処刑するのを目撃しました。

 タリバンは米軍主導の侵攻が始まった2001年以前よりは活発ではないものの、勢力を盛り返しているのが確認されています。その一つが、タリバン戦士が行う影の裁判システムです。6月に、トライバルエリアのバジョール(Bajur)で、米軍のためにスパイ行動を行った2人が、数千人の群衆の前で処刑されました。皮肉にも、こうした地域では、タリバンを恐れて犯罪が減っています。

 タリバン内部の情報は、なかなか報じられませんが、この記事はタリバン式裁判の復活を通じて、彼らが大衆からしっかりとした支持を受けていることを窺わせます。アフガン政府は腐敗しており、仕事が遅いことで不人気ですから、ISAFがいくら頑張ってもタリバンへの支持が高まってしまうのです。イラクよりもアフガンの方が、こうした問題は大きく、改善は困難です。これは戦闘よりも気になることです。そして、今や敵はアフガンとパキスタンだけではなく、隣接するウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、中国のウイグル自治区にも広がっています。インド方面のアルカイダ系組織はアフガンに移ってきたはずですが、インド国内でのテロ事件も増加させています。このように広範な地域に関連するテロ組織が林立することは、かつてありませんでした。状況は非常に悪いです。しかし、国際社会はまだ、状況を正しく認識していません。培われてきた軍事の英知が生かされていないのは、中心的な存在であるアメリカが道を踏み外しているからです。早く、まともな軍事議論が通用する国際環境に戻らなければならないのですが、見たところ、それは不可能に思えます。


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