サドル師が民生向上に転向か?

2008.8.7



 military.comによれば、ウォールストリート・ジャーナルが、ムクタダ・アル=サドル師が、マハディ軍を解散し、社会福祉のための組織に作り直すつもりだと報じました。

 マハディ軍の新しいパンフレットが入手され、その内容がサドル師の広報官によって確認されました。これからは、反米の闘志ではなく、シーア派の精神が活動の中心になります。教育、宗教、社会正義に焦点が合わせられます。そして、武力は完全に使えなくなります。

 しかし、ウォールストリート・ジャーナルは武装解除からはほど遠いと書いています。マハディ軍には内部抗争が存在し、サドル師は多くの時間をイランで過ごしているためです。停戦命令を無視した強硬路線論者たちは、停戦を支持するライバルたちを暗殺しており、新しい戦略を拒絶すると考えられるためです。

 極めて興味深い記事が出ましたね。この戦略転換がうまく行けば、イラクの治安は飛躍的に向上することになりますが、マハディ軍の完全な分裂を起こす危険も持っています。戦略転換が成功した場合でも、それはイランの影響力を増すことも考えられます。一番疑うべきなのは、米軍をアフガニスタンへ移動させるために、一時的にイラクの治安を向上させようとしている可能性です。アメリカが主力をアフガンに移したところで、再びマハディ軍が武闘路線へ転じ、アメリカに二正面での戦いを強いることも考えられます。米軍の広報官がこの変革を手放しで評価していないのは、そうした疑いがあるためかも知れません。ここしばらくイラクからの情報には注意した方がよいかもしれません。


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