アフガンで誤爆、民間人90人が死亡か?

2008.8.27



 military.comによると、国連は西アフガニスタンで、米軍とアフガン軍が空襲で、子供60人を含む民間人90人を殺害した「説得力のある証拠」を見出したと発表しました。これは、アフガン当局と村人の会合で証言としてのぼったものですが、写真や被害者が埋葬された墓などの証拠は示しませんでした。

 証言によると、犠牲者は子供60人、成人の女性と男性が15人ずつです。この他に15人の村人が負傷しました。連合軍は、ヘラート州(Herat province)、アジザバッド村(Azizabad village)の空襲でタリバン指揮官を含む25人の戦死と5人の民間人が死亡したことだけを確認していると発表しています。事件は調査中です。

 民間人への誤爆事件としては規模が大きいので、この事件はよく調査される必要があります。自由落下させるタイプの爆弾だけでなく、レーザー誘導式の爆弾がこれだけ一般的になった現代でも、未だに誤爆が起きるのは憂慮すべき事態です。いつも言うことですが、武力による防御には、こうしたコラテラルダメージ(付帯的な被害)が付き物です。湾岸戦争の時、平素は戦争に反対だと言う人が、「米軍がピンポイント爆撃で民間人の被害を最小限に抑えているのは評価できる」と述べるのを聞いて失望したことがあります。「ピンポイント爆撃」という言葉は、その実態を隠してしまう悪い言葉です。以前よりは照準が正確になったものの、砲爆撃は依然として危険であり、その精度は砲爆撃の状況によっても、大きく変化することを忘れるべきではありません。

 こうしたハイテク兵器に魅せられ、そのシステムを追いかけても、戦争の実態は見えてきませんし、有益な意見を提示する力をつけることはできません。軍事雑誌を読んだところで、そこには軍や兵器メーカーが宣伝したい情報しか載っていません。システムは崩壊するものだということを前提に読まないと、兵器の本当の性能を知ることはできません。残念ながら、世間には兵器を中心とした分析が軍事評論だと考えている人がいます。こうした人から、現在進行中の紛争について、有益な意見を聞けたことはありません。

 このサイトで扱える事柄は、世界の軍事情勢のごく一部です。いまも、軍事問題の重大な変化が世界のどこかで起きているかも知れません。我々は多くの場合で、変化を追いかける立場なのです。そうしたジレンマに耐えられない人は、極端な推論に飛びついて、不安を紛らそうとします。

 我々は、地道に分析を繰り返し、その経験の中から、少しでもよい考察ができるようにするしかありません。そういう人が少しでも増えてくれることを願うしかありません。


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