ロシアがグルジアでハンヴィーを捕獲

2008.8.23



 先日、armytimes.comが、グルジアの港町ポチ(Poti)で、演習を終えて船積みを待っていたハンヴィー4台がロシア軍に捕獲されたと報じました。これに関して、ワシントン・ポストはロシア軍車両が捕獲したハンヴィーを牽引する写真を報じています(写真1写真2)。space-war.comによると、ロシア軍はアメリカの返却要請に対して、まだ回答していません。

 目撃者によれば、ハンヴィーは1台多い5台で、合衆国海兵隊を意味する「USMC」の文字が表記されていました。ロシアの新聞は、ハンヴィーには衛星通信機材が搭載されており、調査するためにモスクワに運ばれています。米政府報道官は、ハンヴィーの台数や何が搭載されていたかはコメントしていません。

 これは割と小さな話ですが、興味深い見方もできます。ロシア軍が捕獲した台数は4台で間違いないのだと思われます。ロシアには、西側兵器のコピーを作ってきた過去があります。特に、実物が手に入った時は分解して、そっくりの兵器を作ります。第2次世界大戦中、満州を爆撃したB-29がソ連領内に不時着した時、ロシアが機体をアメリカに返さず、分解してそっくり同じ物を作り、Tu-4と名づけたのは有名な話です。ハンヴィーにも似たようなことが行われるかも知れません。しかし、一番の問題は、衛星通信機材が奪われたことです。ロシアがこれまでに、この通信機材を入手していなければ、その性能が分かってしまうのは、アメリカにとっては面白くない話です。もしかすると、ナビゲーション用GPSも含まれていたかも知れません。ロシアはGPSの電波を攪乱する装置も作っているので、その性能実験に使われる恐れもあります。

 現段階で、ロシアが捕獲した物を返すのは、どの方面からも弱腰に出ているとみなされます。グルジアの件でつっぱりたい彼らとしては、返す理由は、なおさらありません。また、NATOがロシアとの協力関係を一時停止すれば、ロシアも全面凍結で応酬してきました。これらはそれほど重要ではない事柄で、どちらも体面を保つために、価値の低い分野を切り捨てて見せているだけです。まだ対立の負荷は低く、この状況で、ロシアがアメリカに妥協することは考えられません。こんな事情から、4台のハンヴィーが返却される可能性はとても低いことになります。


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