感電死事故の証拠が公表さる

2008.8.1



 military.comによると、KBR社が、イラクの軍施設で少なくとも16人の米兵が感電死した事件について、自らの責任を否定しましたが、民主党から証拠書類が公表されました。

 KBR社の重役トーマス・ブルーニ(Thomas Bruni)は、軍からの特別な指示なしに作業をする権限がなかったという説明を繰り返しました。問題を起こした給水ポンプを設置したのはKBR社ではなく、イラク人労働者が使うラクダの毛で作られた紐で固定されていた点を指摘しました。

 しかし、米議会の委員会で民主党議員が、感電死したマセスが後に居住した同じ地区に住んでいた別の下士官が、2007年6月から10月までの間に、4〜5回感電を体験したことを指摘しました。7月8日にこの下士官は「パイプに電気が流れており、シャワーの最中に感電する」という作業命令を書きました。KBR社の電気技師は、建物東側の圧力スイッチに問題を見出し、配管を修理する必要があるというメモを作りました。7月9日、KBR社の技師3人が、圧力スイッチと給水ポンプを交換しました。作業命令書には「終了」のスタンプが押され、作業を指示した下士官によるサインが記されました。つまり、KBR社は事故に関係した施設を、事故の前に修理していたのです。しかし、ブルーニ氏は、下士官が別の建物の作業命令書も書いていることから、その作業は別の建物のものであると主張しました。国防総省は、KBR社はマセスの氏に責任はないとしていますが、民主党議員が提出した書類は見ていないことも認めました。

 マセス家の弁護士が存在するはずの証拠と言ったのは、民主党が提出した書類のことだったようです。事故の半年近く前に、KBR社の社員は事故を起こした施設を修理していたのです。おそらく、この情報は民主党が国政調査権で米軍から入手した書類の写しに根拠を置いているのです。弁護士は民主党から、その書類を見せられて、KBR社の関与を確信したのでしょう。この情報がひっくり返されるとすれば、KBR社が主張しているように、別の建物の修理に関する書類だったことが証明されることが考えられます。その書類に書かれている建物の名称が、間違いなくマセスが住んだ建物であるかについて、場合によっては、民主党議員がイラクに行って、直接調査をする必要が出てくるかも知れません。あるいは、すでに何らかの調査を行って、確認を取っているかも知れません。

 それにしても、国防総省の反応の鈍さには呆れます。重要な証拠も確認しないまま、結論ありきで済ませようという態度は、第一線の部隊から離れて、椅子を磨くことが仕事になってしまった軍人の怠慢しか感じられません。民間軍事会社と国防総省との癒着は、断ち切られなければなりません。人間は安易な方向に流れやすいものなのです。


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