米軍の同性愛差別改善が一歩前進か

2008.7.9



 歩みの遅い軍隊内の同性愛者問題が、少し進展したようです。

 military.comによると、空軍中将を含んだ4人の退役軍人による研究の結果、ゲイやレズの隊員が勤務することは、軍の士気、秩序、規律あるいは結束力に悪影響を与える恐れはなく、「聞かない、言わない政策」は撤廃されるべきだと結論されました。(pdfファイルはこちら

 現在、同性愛者であることを公言しない限り、米軍に勤務することが許されています。しかし、同性の者と結婚したり、同性愛運動に関わることはできません。この点が幸福追求の権利を侵害しているとして、改善が求められているのです。「聞かない、言わない政策」は、軍の同性愛差別の撤廃を公約に掲げたクリントン政権が、軍の反対で、公約が実現できなくなったために、妥協案として設けた政策です。

 研究はカリフォルニア大学サンタバーバラ校(the University of California at Santa Barbara)で、マイケル・D・ パーム・センター(the Michael D. Palm Center)の後援で行われました。やはり、ゲイ天国といわれるカルフォルニア州の大学が関係していましたね。

 この研究は、イギリスとイスラエルの軍隊では、同性愛者が公然と勤務していることを証拠としてあげました。それにしても、16ページとは、非常に短い論文です。発見事項として10個、勧告事項が4個、と、結論部分も簡潔です。文章にすればこの程度のことなのに、長年の慣習を変えるためには、学術論文を必要とするわけです。こうやって少しずつ地ならしをしていって、関係各所に働きかけが進むのです。今回の報告書には、軍隊内での同性愛を禁止する合衆国法典・第10編・第654条の撤廃も含まれていますから、議会や大統領府も関係してきます。これは次の大統領の仕事でしょう。そうすると、バラック・オバマ氏は同性愛者の票を得やすくなるかも知れませんね。

 実に遅々とした歩みですが、同性愛差別の撤廃は着実に進んでおり、もはや後戻りすることはありません。同性愛が公認された米軍がどうなるのか、どんな文化が生まれるのか、非常に興味があります。これは米軍の歴史の中でも、画期的な一瞬なのです。 

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