全文掲載:飯柴大尉の声明文

2008.7.29



 小銃部品の不法輸入事件に関して、飯柴智亮大尉の声明文を、飯柴大尉ご本人から全文転載する許可が取れました。ここに一切の修正を加えずに掲載しますので、是非お読みください。

 この声明文により、疑問点のいくつかが解け(特殊作戦群がM4小銃を所有している事実、実費は自衛隊が負担したことなど)、私の思い込み(銃刀法に抵触の部分など)を修正することができました。飯柴大尉には、私から深く感謝を申し上げます。

(転載開始)

■■■声明文■■■

2008年7月19日付けの報道の件について、
私、飯柴智亮から声明文を発表させていただきます。

まず最初に私自身が行った行為、
そして認知している事実の一部始終の全てを、
何も隠さずに述べさせていただきます。

事実を完全に表記した上で、
この件に関して私のコメントを述べさせていただきます。

【一部始終】

まず最初に確認しておきますが、
報道された主な内容に関しては事実であり、
私は不法輸出の罪状で米国連邦地裁から起訴されました。
その事実を踏まえた上で、
そこに至るまでの経緯を正確かつ簡潔に説明させていただきます。

話は2005年秋にさかのぼりますが、
私の所属していた大隊が、渡米して近接戦闘訓練を行う
陸上自衛隊所属の富士普通科教導連隊に、
訓練(演習名:Rising Warrior III)を施す任務を承りました。
そして日本語と英語の両方を理解する私が
連絡将校の任務を大隊長より直々に命令されました。
約五週間の訓練中、私は自衛官たちと交流を深め、
複数の方達と連絡先を交換し、
部隊が日本に帰国後も連絡を取り合うようになりました。

後に親しくなった自衛官の一人から電話による連絡がありました。
内容は『陸自内に新設された特殊作戦群が、
新たに購入した米国コルト社製M4カービン小銃に取り付ける
光学サイトの購入を検討、結果米国製EOTech 553が選ばれた。』
というものでした。

さらにその自衛官を通じて特殊作戦群からの要望として、
『EOTech 553六十個を購入して発送してくれないか。』
という要請を受けました。
部隊が部隊、事情が事情ですので、私は快く受け入れました。

私はオプティクス・プラネットというスコープ等を取り扱う業者に
連絡を取り、EOTech553六十個を可能な限り安い値段で購入し、
日本に郵便荷物で発送しました。
この時点で私はEOTech 553が輸出規制対象のリストにある事を
認知しておりませんでした。
米国ではEOTech 553はスポーツショップ等で
特別な許可無しに誰でも購入可能な品であるからです。
日本において所持していても、法律に抵触するものではありません。

またこの件に関して私が受け取ったのは
EOTech 553の支払い代金及び送料のみで、
金銭の報酬は一切受け取っておりません。

荷物発送後しばらくして、
私に依頼のあった自衛官より初めて
EOTech 553が輸出許可の要るものだと知らされました。

その結果通報を受けた米国司法当局の捜査が開始され、
私の元に米司法当局から事情聴取の要請がありました。

任意ではありましたが私は事情聴取に対して全面的に協力し、
この声明文で述べた事の全てを連邦捜査官に細かく説明しました。
捜査官は私が捜査に協力し、
故意による犯罪行為の意思及び反米国の思想が無いと確認できたため、
私は逮捕・拘留されませんでした。
今後も収監の予定はありません。
ですが私の行為が規則に違反したのは事実です。
よって連邦地裁の検事は私を起訴する決定を下し、
2008年7月19日、私は正式に起訴されました。



なお、この声明文を発表するにあたり、
防衛省・陸上自衛隊幕僚監部(通称:陸幕)より
私に連絡があり『今回の件に陸上自衛隊が関わっているという事実は
伏せて欲しい』との要請がありました事実も、
ここに報告させていただきます。



【コメント】

まず今回の件に関して、世間をお騒がせしました事を、
心よりお詫びを申し上げたいと思います。
米軍将校という重責を担う立場にありながら、
法規に違反してしまった事は、いかなる言い訳もできない、
そう深く受け止めております。

それを重々承知した上で、この場で申し上げたい事があります。
自分は十九歳の時に米軍入隊を目指して単身渡米し、
今日まで日々精進を続けて参りました。
その結果、米国大統領より米軍将校・陸軍少尉として任官され、
大尉まで昇進するという幸運に恵まれました。

私が米軍に入隊する意思を持った最大の理由は、
『母国日本がまだ第二次世界大戦で負った大きな傷から癒えておらず、
満足に単独で国防を行える状態ではない。
ならば米軍に入隊する事で、
日本を日本の外から守る事ができるはずだ。』そう判断したからです。
また『米国は日本を含めた民主国家群のリーダーであり、
世界の秩序は米国、それも米軍が世界に展開している事によって
保たれている』と信じているからです。
現在もこの信念に変化はありませんし、
今後も変る事はありません。
日本国は米国との同盟を維持しつつ、
一歩一歩自立に向けて確実に歩んで行くのが唯一の道で
あると確信しています。

今回の事も『母国日本の有志達が、
毎日国防任務に励んでいる。
ならば自分はできる限り応援しよう』という単純な愛国心的な動機から
来たものでした。
その点だけはご理解下さい。

Rising Warrior IIIのみでなく、山桜51・53、CALFEX‐2005など、
自分は数度に渡って自衛隊の訓練及び
日米合同演習を支援する任務をこなして来ました。
日本語と英語、そして両国の文化の違いを完全に理解できるという
立場上、普段の軍務より三倍も四倍も多忙でしたが、
母国日本のため、祖国米国のため、
そして日米同盟のために働いていると思うと苦にはなりませんでした。
それは自身が請け負った職務を非常に名誉な事だと感じ、
それが自分の信念と合致していたからです。
それが最終的にこのような結果を招いてしまった事が
本当に残念でなりません。



最も辛く感じている事は、
今まで私を応援していただいた方々の期待を裏切る結果になってしまった
事です。
この事実に関しては考える度に心が痛み、
毎日その痛みと闘いながら過ごしています。

今後は今回の過失を深く受け止め、規則を厳守し、
二度と同じ過ちを繰り返さないよう気を引き締めながら
日々を生きていく所存であります。


2008年7月28日


飯柴智亮
米国陸軍大尉

(転載終わり)


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