タリバンが国境地帯で攻勢

2008.7.29



 spacewar.comによると、パキスタン国境から15kmにあるアフガニスタン領内のセプラ地区(Spera district)で、100人規模の武装勢力による攻撃があり、50〜70人の武装勢力が死亡しました。

 午前2時に警察に対して銃とRPGによる攻撃が始まり、戦闘になりました。警察とISAFの兵士が武装勢力を包囲し、武装ヘリが空から支援しました。攻撃は早朝まで続きました。ISAFは武装勢力の死者を「二桁」とだけ発表し、カースト(Khost)の首長は50〜70人の範囲としました。アフガン警察の警察官が初期の攻撃で1人死亡し、1人が拉致された後で斬首されて死亡しました。敵が撤退した後に、空軍が爆弾を落としました。武装勢力が村の中に入ると、一般人の被害を避けるために空爆は中止されました。武装勢力は空軍が来る前は、セプラ地区の地方本部に極めて近い距離まで接近できたといいます。

 この記事は、他の襲撃や自爆攻撃などのテロ事件についても報じています。こうした事件がアフガンで続発しています。報じられるのは、その一部にすぎず、我々には実状がどうなのかははっきりと分かりません。

 それでも、この記事から分かるのは、アルカイダと共闘しているタリバンが、グループによる攻撃を仕掛けるようになったということです。イラクでは2003年に終息した攻撃方法が、なぜか今、またアフガンで復活しています。

 前に書いたように、こうした集団での攻撃はゲリラ戦では有効な戦術ではありません。この攻撃も、武装ヘリや空軍の支援を受けられるISAF側が有利なため、タリバン側が大きな損失を被っています。こうした襲撃では、応戦しながら敵の所在地を特定し、できる限り包囲して動けないようにしつつ、判明した敵の位置に対して空爆を要請します。タリバンは夜襲の有利性を利用したつもりでも、暗視装置を持っている米軍やNATO軍には、それほど優位を得られないわけです。

 すでに前例があるのに、同じ失敗を繰り返すのは、近代的な軍隊ではそうやらないことです。それでも、不合理な軍事行動を行うのがイスラム武装勢力の不思議なところです。彼らが失敗から学べば、イラクでのように、次第にこうした襲撃は減り、IEDや自爆テロへ移行するかも知れません。そうなると、ISAF側はやっかいなことになります。この調子で襲撃を繰り返し続けてくれると、手勢を減らすことになるので、ISAFにとっては戦果になります。そういうわけで、ここしばらくは、タリバンの襲撃の内容と回数に注意が必要です。

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