イランの遠心分離器が6千台に増加

2008.7.28



 イランのマハムード・アハマディネジャド大統領(President Mahmoud Ahmadinejad)が、イランは現在、6,000台の遠心分離器を持っていると述べたと、military.comが報じました。

 遠心分離器は天然ウランから濃縮ウランを作る装置です。これはイランがこれまで主張していた3,000台の2倍の数です。4月に、アハマディネジャド大統領はナタンズの核施設に6,000台の遠心分離器を設置しはじめたと述べていました。この夏までに、イランが6,000台の遠心分離器を稼働することは、かなり確実だとみられていました。2月には、これまで「P-1」とみられていた遠心分離器は、2倍以上多く生産できる「IR-2」であることを、イラン高官が認めていました。イランは最終的に54,000台の遠心分離器を使って、大規模なウラン濃縮へ向かう計画を持っています。

 濃縮ウランがあればガンバレル型の原子爆弾が製造でき、濃縮ウランを使う重水炉からはインプロージョン型の原子爆弾に必要なプルトニウムが生産できます。イランはIAEAに申告しないで重水炉とウラン濃縮施設を建設しており、それが核開発であることを窺わせていると考えられているわけです。

 毎度のことですが、核開発の真相は闇の中です。遠心分離器の数も物証はなく、大統領の言葉だけです。実数はこれより多いのかも、少ないのかも、受け取る側の考え方次第です。設置したら移動できない遠心分離器がナタンズにあると、公言していること自体、疑わしいと考えることもできます。実際には、遠心分離器はイラン各地に分散して設置されているかも知れません。大方の見解では、イランが核開発を実現するのは、あと1年くらいとみられています。しかし、それらはすべて推測の集積物なのです。用心するつもりで、疑わしいものをすべて疑うと、脅威は誇張されます。軍事分析は常にこうした不確実な情報の影響を受けます。しかし、専門家が「分からない」というと、権威が損なわれるので、確定的なことを言う人もいます。その他、政府筋の専門家は政府の意向を踏まえた意見を述べるものです。こうして真相は一層見えなくなるのが、核問題の困った一面です。

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