キューバにロシア爆撃機で米が警告

2008.7.24



 space-war.comによれば、ロシアは、迎撃ミサイルのポーランドとチェコ共和国への配備計画に対して、キューバに長距離爆撃機を定期的に飛行させる対抗策を検討していると、ロシアの新聞「イズベスチャ」が報じました。

 これは匿名のロシア空軍高官が述べたことで、キューバに永続的な基地を設けるのか、燃料の補給用に利用するのかは明らかではありません。キューバのロシア軍基地は、2002年にレーダー基地が閉鎖されたことでなくなりました。ロシアでは、迎撃ミサイルの配備を、1962年のキューバ危機にたとえた議論が行われています。

 これに対して、米空軍参謀総長ノートン・シュワルツ大将(Gen. Norton Schwartz)が、そうした措置は「越えてはならない一線を越える」と警告した、とmilitary.comが報じました。

 今のところ、お互いに口撃の段階で、非難合戦をやりながら、相手の出方を見ているところです。というのは、まだ迎撃ミサイルが配備されたわけではなく、まだミサイル配備を中止する余地があるからです。今回の報道は、明らかにロシア側の意図的なリークで、それを新聞に報じさせることで、アメリカの対応を見ているのです。

 キューバ危機では、攻撃用の弾道ミサイルが問題視されましたが、今回は迎撃ミサイルです。ロシア本土に重大な被害を与えるような兵器ではありません。しかし、ロシアから発射される弾道ミサイルを迎撃できるミサイルが近隣諸国に配備されると、ロシアの核抑止力が損なわれるとロシアは考えます。それはアメリカと戦争ができなくなることだけをロシアが心配しているのではありません。まったく仮想の話ですが、西アフリカのセネガルが秘かに核装備を完成させていて、ロシアと紛争を起こしたとします。セネガルがロシアに向けて弾道ミサイルを発射し、ロシアが報復のために弾道ミサイルを発射したとしましょう。アメリカが政治的な理由からセネガルが核攻撃を受けるのを「望ましくない」と考え、ロシアの弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃墜したとします。ロシアはこうした状況も想定して、アメリカのMD計画に反対しているわけです。

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