イラクで手抜き工事による電気事故が多発

2008.7.19



 イラクで請負業者によって行われた屋内配線工事で、多くの感電死や火災が起こっていると、military.comが報じました。この記事は、ニューヨーク・タイムズ紙に最初に掲載されました。

 今年1月にグリーンベレーの下士官がシャワーを浴びている最中に感電死したため、国防総省が問題を取り上げるようになりました。同省は2003年9月から13人のアメリカ人が感電死したと主張しています。2006年8月から2007年1月までに、少なくとも283件の電気が原因の火災がイラクの米軍施設を破壊したり、ダメージを与えたことが、陸軍の書類によって明らかになりました。バグダッドのある建物にいる兵士は、生活領域で毎日のように電気ショックを受けることに不満を持っています。出火した監視塔から飛び降りて怪我をした兵士もいます。2007年2月に公表された陸軍の調査によると、イラクにおける戦闘以外の安全上の問題の筆頭が電気の問題です。

 この工事はKBR社(KBR Inc.)が請け負ったものでした。KBR社は、4,000棟の建物と戦闘地域で住居として使う35,000個のコンテナの電気配線を管理しています。上院委員会の調査によれば、請負業者は下請け業者を監督する者の電気の知識が乏しかったり、英語を話せない外国人を雇っています。KBR社は工事と感電死の関連の証拠を見つけていないと主張していますが、陸軍の報告書は、同社がすでに調査を済ませており、電気工事に構造的な問題があることを見出していたと書いています。一部の作業は、1日数ドルで雇われたイラク人の下請け業者に引き渡されていました。同社が言う構造的な問題とは、この下請けシステムのことでしょう。

 ずっと気になっていた謎が解けました。以前に、米兵の死因を調べていた時、イラクの基地内にあるプールで泳いでいた兵士が感電死したという記録を見つけました。なぜプールで感電死したのかが理解できず、頭に引っかかっていたのですが、KBR社の手抜き工事が原因だった可能性があると考えるようになりました。

 高い代金を請求しながらも、工事の質はこの程度だったというわけです。屋内配線は技術的に完成されている分野で、普通に作業さえすれば、問題が起きる確率は小さいはずです。おまけに、米軍によい印象を持っているはずがないイラク人に作業を任せれば、悪い材料を使ったり、絶縁を十分にしなかったりと、意識的に手を抜くことは予想がつくはずです。事故が意図的なサボタージュであった可能性は十分にあります。戦後、日本文化に詳しい米軍将校の中には、街の床屋に行って、髭を剃らせた人がいたと聞きます。日本人は天皇の命令には従うから、カミソリで喉を切られることはないと確信していたと、彼は言います。しかし、イラク人は日本人とはメンタリティを異にする民族です。米軍や民間軍事会社は、彼らがサボタージュ作戦に出るとは考えなかったのでしょうか。だとすれば、それはあまりにも杜撰です。

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