ワナット村の襲撃は複数団体の共闘

2008.7.16



 アフガニスタン、ワナット村で米軍前哨基地を攻撃した武装勢力の兵数は約200人だったとmilitary.comが報じました。民間人が武装勢力を後方から支援していたことも分かっています。

 米軍に被害が多く出たのは、武装勢力が基地の壁を破壊して中に侵入したためでした。攻撃ヘリコプターが呼ばれ、武装勢力を数時間に渡って攻撃し、多数を殺害、40人を負傷させました。攻撃者はヌリスタン州(Nuristan)から来ましたが、アフガン人とパキスタンの武装勢力との混合部隊で、タリバンの他、ラシュカー・イ・タイバ(Lashkar-e-Tayyaba)、ヘジブ・イ・イスラミ(Hezb-i-Islami)などの武装グループ、その他のカルザイ政権に不満を持つ者たちが混在していました。

 やっと大きな被害が出た原因が分かりました。次に気になるのは、壁が破壊された理由です。RPGだと、人が入れるように壁に穴を空けるのは難しそうです。爆薬を使ったのだとすれば、誰かが壁まで爆薬を持っていく必要があります。そうした接近を阻止できなかったのはなぜかという問題が浮かぶのです。現場の地図や写真があるとよいのですが、公開されるはずはありません。

 アメリカ主導の対テロ戦の(負の)成果としてあげられるのは「テロの拡散」だと、来月出版する自著の中で私は書いています。この記事に見られるように、タリバン以外のイスラム系武装グループが共闘している状況が確認されました。ラシュカー・イ・タイバはビン・ラディンから資金援助を受けているアルカイダ系のテロ組織で、その別働隊はムンバイの列車爆破事件で犯行声明を出しています。インドでのテロ攻撃の先鋒と見ていましたが、アフガン戦に参戦したのです。このように敵が増えるほど、友軍の戦力は集中しにくくなり、勝利は遠ざかります。ブッシュ政権のやり方では、敵を無駄に増やすだけなのです。

 ちなみに、新刊の最終的な校正が昨日終わりました。8月1日発売の予定で作業が進んでいます。詳細が決まったらお知らせします。

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