新型の空飛ぶIED、IRAM

2008.7.11



 military.comによると、イラクで新型のIEDが使われるようになり、被害が出ています。新型IEDはロケット式で、空中で爆発する構造で、IRAM(improvised rocket-assisted munitions)と呼ばれています。

 IRAMによって、少なくとも米兵3人を含む、21人が死亡しました。使っているのはシーア派の武装組織と考えられています。この爆弾は数百ポンドの爆弾を詰め込んだプロパンタンクで、107mmロケットを使って飛ばします。トラックの後部に設置され、リモコンで発射されます。記事に写真が載っていますが、全体が見えないので、正確な構造は分かりません。他の記事を探してみたら、long-war-journal.orgに全体が分かる写真が見つかりました。記事もこちらの方が詳しいようです。

 military.comに載っている米軍のコメントは、IRAMに従来のIEDや迫撃砲・ロケットと違った、一度に多くの米兵を殺す潜在力があるとしています。しかし、この見解は納得できません。基本的にIRAMは手製のロケット砲であり、軍用のロケット砲よりは精度が低いと考えるべきです。

 long-war-journal.orgでは、IRAMの精度は悪いと評しており、これは納得のいく説明です。使われているロケットは中国製の63型ロケットです。5回の爆発が確認されていますが、1発は発射機で起こり、写真に見られるとおり、発射装置を破壊してしまいました。こちらの記事では、死者は18人、負傷者は29人、15件の建物に大きな被害が出たとしています。死者の2人はマハディ軍のメンバーとのことですが、おそらく、彼らはIRAMを操作していた者たちでしょう。

 米軍はIRAMの弾頭の射程やサイズを機密としていますが、匿名の情報源によれば、射程は50〜150ヤード(45.72〜137.2m)です。IRAMは極めて近距離でしか使えない兵器です。しかし、6月3日のシャーブ(Sha'ab)であった攻撃では、800ヤード(731.5m)離れた戦闘前哨に向けて発射された可能性があるとみられています。しかし常識から言って、この距離で命中する可能性はほとんど考えられません。IRAMはまぐれ当たりで大きな戦果を出すかも知れませんが、それほど大きな脅威にはなり得ないと考えられます。

 米軍はロケットがイラン製だと見ており、ロケットのケースに示されているロット番号と製造日は3年の内に生産されたことを示しているとのことです。これはイラク占領後にイラク国内に持ち込まれたことを示しており、だから米軍もここをアピールして、イランの関与を主張するわけです。

 この種の手製ロケット弾は、そう珍しいものではありません。プロパンタンクのような民生品を流用しているのは、武器の不足を連想させます。休戦破りの攻撃ですから、イランからの支援を受けられていないグループが作ったのかも知れません。 

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