米議会が大統領の戦争権限に物言い

2008.7.10



 military.comによると、米議会が行政府が戦争をはじめる権限に制限を与えるため、戦争権限法(War Powers Law : War Powers Resolution)の改正を検討しています。ジェームズ・ベイカー3世(James Baker III)とウォーレン・クリストファー(Warren Christopher)が議長を務める委員会は、1年間以上も問題を研究し、3ダース以上の専門家に問題を検討させ、この結論を導き出しました。

 7月8日に発表された報告書によると、現在の戦争権限法は行政部と立法部の協力を促進できずにいます。そこで、大統領が重大な武力紛争や1週間以上継続する秘密指定でない作戦を行う場合、いかなる計画も議会に通知し、議会は30日以内に活動の承認を決定するよう、法律を改正しようというわけです。

 これは驚きました。早い話、大統領が勝手に戦争をはじめないようにするための「無駄吠えする犬には首輪をつけておけ」法案です。米議会がブッシュ政権の対テロ戦争を全否定するといってもよい法案を検討しているというのです。しかも、議長が前ブッシュ政権の国務長官だったベイカーなのだから、事態はもっと皮肉です。ベイカーは2006年のイラク問題研究グループでも議長のひとりでした。クリストファーはクリントン政権時の国務長官ですから、この委員会は無理なく議会を通過するように、両党の国務長官経験者を議長に据えたわけです。

 早速、大統領候補にも法案の概要が説明されましたが、オバマは法案を支持し、マケインはノーコメントでした。この即断性の乏しさがマケインの欠点です。こうやって周りの反応を見てから結論を出すのが、彼の悪い癖なのです。いま、米国民が期待しているのは、正しい判断を素早く下す大統領です。どんな問題に対しても、すぐに意見を言わないと、米国民から「信念がない」とみなされてしまうでしょう。

 この法案では1週間を超えない秘密作戦は対象外です。議会に通知する以上、秘密が漏れる恐れが高くなると考えなければなりません。そのため、秘密にする必要がない作戦までが秘密指定を受ける恐れがあります。短期間で決着すると見られた作戦が長期戦へと発展する可能性も想定しておくべきですから、抜け穴はできるだけ小さくしたいところです。もっとも、そんな軍事小説みたいな展開は、現実には少ないでしょう。

 サミットに出席中に、こんな法案が公になるとは、ブッシュ政権もついていません。と言うよりは、身から出た錆でしょうか。議会を無視しすぎたツケを、いま払わされているのです。

 しかし、戦争が起きるプロセスは様々で、こうした法案で危険をすべて解消できるものではないことも知っておくべきです。イラク侵攻でも、偽の情報に大勢が騙されました。結局のところ、戦争を正しく判断するためには、私たちはしっかり事態をみつめるしかないのです。

 というのも、現行の戦争権限法は、ベトナム戦争の教訓を元に1973年に制定されたものであるためです。現行の法律でも、かなりの制約があり、議会の承認が得られない場合、60日間以内に軍を撤収しなければなりません。今回の改正では、この期間が30日間に縮められました。しかし、結局のところ、議会はブッシュ政権がまき散らした嘘に騙されました。問題はここにあります。いざ有事という時、本当に正しい判断ができるかという問題は、私たちにも無縁ではないことも知る必要があります。 

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.