不祥事で米空軍トップが辞任

2008.6.6



 ロバート・ゲーツ国防長官が空軍トップ人事に大鉈を振り下ろしました。米空軍の制服組のトップである空軍参謀総長のマイケル・モーズレイ大将(Gen. Michael Moseley)と、私服組のトップである空軍長官マイケル・ウェイン(Air Force Secretary Michael Wynne)が辞表を提出したとmilitary.comが報じました。

 両者の辞任は、しばらく前に起こった米空軍の失態が原因です。B-52爆撃機が誤って核武装されて州を越えて飛行した事件。弾道ミサイルの弾頭に使われる4個の電気式ヒューズが誤って台湾へ送られた事件を憶えている方は多いはずです。これらの事件はカークランド・ドナルド海軍大将によって調査が行われ、「ドナルド報告」としてゲーツ長官へ報告されました。報告書は機密であるため詳細は分かりませんが「空軍の核戦略の任務における効果的な指導力の監督が欠如していることを見出した」と結論されているといいます。

 ゲーツ長官が2人の辞任を求めたとは書いていませんが、おそらくそれが真相でしょう。辞める高官を必要以上に傷つけないよう配慮しているのでしょう。両者のコメントを見ると、この辞任は避けられないことを理解しているようです。

 「死傷者を出したわけでもないのに、この程度のミスで辞任?」と思うのは誤りです。戦略爆撃の任務が恒常化したのは、核戦略が確立されてからです。それまでは陸軍の支援が主要な任務で、元々は陸軍航空隊として出発した空軍が大きな権限を手に入れたのが核戦略の出現でした。これ以降、空軍は国家の究極の防衛を任されているという強烈な自負を持つようになりました。その核戦略の最前線で、かなり低レベルのミスを連発した以上、トップが責任を取らなければならないのです。ここに核戦略と通常兵器の違いがあります。核戦略は事実上、使われることがなく、その信頼性を維持することが抑止力を保つポイントなのです。従って戦略空軍にとって、ミスを起こさないことは特別に重要で、それ自体が任務だと言えるのです。

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