米海軍が船内にテロ容疑者を拘留か

2008.6.4



 また、アメリカのスキャンダルに関する報道が出てきました。イギリスの人権団体「リプライブ」が、アメリカが海軍艦艇をテロ容疑者の収容所として利用していると批判したとmilitary.comが報じました。

 リプライブは、アメリカ生まれのタリバン兵ジョン・ウォーカー・リンド(John Walker Lindh)、オーストラリアのタリバン支援者デビッド・ヒックス(David Hicks)などが、ソマリア沿岸やインド洋上のディエゴガルシア島にいる米海軍艦船内において、メディアや弁護士の目から遠ざけるために長期間拘留されていると主張し、米軍やヨーロッパ議会から得た証拠やグアンタナモの収容キャンプにいた元抑留者からの聴取を評価した結果だとしています。収容所として使用されたのは約17隻で、アシュランド(USS Ashland)、バターン(USS Bataan)、ペリリュー(USS Peleliu)などが使われました。

 米海軍は少数の抑留者を短期間拘留したことは認めましたが、長期間の拘留は否定しました。船内での抑留器官は数ヶ月ではなく数週間だったと述べていますが、正確な日数は公表しませんでした。しかし、2001年11月にアフガニスタンで逮捕されたリンドが2002年の初期まで、バターンとペリリュー両方の船内に拘留されていたことは認めました。そうした抑留者は十名未満だったとも主張しています。米海軍はリプライブの主張は不正確で誤解を招くものだと批判しています。

 リプライブのウェブサイトには、さらに詳しい情報が載っています。2人のテロ容疑者、アル・シーク・アル・リビ(Al Sheikh Al Libi)、ムーラ・アブドゥル・サラム・ザィーフ(Mullah Abdul Salam Zaeef)の氏名が明らかになっています。抑留者のひとりは、船内に50人ほどの抑留者がおり、船底に監禁され、拷問を受けていたと証言しました。リプライブは今年後半に完全な報告書を公開する予定です。

 この事件は情報が少ないので、まだ事実関係がよく分かりません。ジョン・ウォーカー・リンドの名前が久しぶりに登場しました。アメリカ人のタリバン兵として世界をアッと言わせた、あの人物です。彼が逮捕されたのは2001年11月25日です。2002年初頭まで艦内に抑留されたのなら、その期間は少なくとも数週間とは言えません。米海軍は正確な情報を開示する必要があるでしょう。そうしないと、大統領選挙へどんな影響を及ぼすかは明らかです。リプライブの報告書が出る頃に大統領選挙があるかも知れないのです。

 ディエゴガルシア島は米軍が基地として活用している小島で、民間人がいない場所です。そこに隔離したことは、アメリカのイメージをまた悪化させます。ソマリア沖にいる艦艇に対しても、日本の補給艦が洋上給油をしている可能性がありますから、日本の平和団体は監禁に関与した艦艇に洋上給油をした実態がないかを調査すべきです。

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