進まないアフガン軍の建設

2008.6.30



 military.comが、タリバンが今年、アフガニスタンで攻撃の範囲とペースを増加すると見込まれる国防総省の報告書を報じました。一方で、アフガン陸軍と国家警察は進歩が遅れており、必要な訓練ができていないとも報告されました。

 実状は相変わらずです。汚職、違法なアヘン取引、人権侵害、再建の遅れなど、問題点が満載です。3月の時点で、アフガン陸軍は1個大隊とひとつの司令部だけしか独立して作戦行動が取れず、一方、26個大隊と5個旅団の司令部、2個軍団の司令部は連合軍の支援なしに対武装勢力作戦を行えませんでした。4月の時点で、米軍はアフガン軍に必要な2,400人の教官の44%だけ、アフガン警察の指導者の39%しか用意できていませんでした。最近、1,200人の海兵隊員がアフガン警察の訓練のために派遣されましたが、秋に彼らが帰還すると、1,400人が残るのみとなります。アフガン軍は今年末までに70,000人、最終的には80,000人に、アフガン警察は82,000人に増員することが目標です。報告書は指導者の不足が訓練計画の促進と拡大を妨げていると書いています。

 この進捗状況を日本の警察予備隊の場合と比較してみました。1950年に警察予備隊の募集が始まると、年内に11回の募集が行われ、約382,000人の応募があり、75,000人の定員はすぐに埋まりました。教育係の米軍人は、1951年は726人でしたが、1960年までに210人に減りました。警察予備隊は、1962年に保安隊になり、1964年には自衛隊となりました。保安隊の時に、すでに戦車連隊があり、海上自衛隊の前身である海上警備隊が作られ、航空自衛隊は自衛隊の発足と同時に創立されています。比較したのが間違いだった、と思えるほどの違いです。アフガン軍をかれこれ7年間くらい訓練して、独立して動けるのが1個大隊というのは、どう考えても遅すぎます。何か特別な事情があると考えなければなりません。このまま訓練を続けても、計画した部隊の訓練が完了するには、かなりの年月が必要でしょう。

 これからも、米軍やその他の連合軍はアフガン軍を補助し続けなければならないということです。イラクもそうですが、アフガンでこの先何をすればよいのかは、正直なところ、アイデアが出てきません。言えるのは、現状がこの先も続く可能性が高いということだけです。

 先進国は高い代償をはらって、テロと戦う方法を学んでいるかのようです。このことは、過去の植民地独立戦争のテロリズムで学んだはずですが、世界はまだ分かっていなかったのかも知れません。この種の戦争は、中東だけでなく、アフリカや東南アジアなど、他の地域でも起こり得ます。中東のテロが片づいても、その後は、別の地域のテロリズムがクローズアップされるだけかも知れません。世界が戦争から平和を学ぶ姿勢は、まだ十分ではないと言うしかないようです。 

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