ブッシュ大統領が国定史跡を検討中?

2008.6.3



 marine-corps-times.comによると、ブッシュ大統領が人気稼ぎの方法を考えたようです。それも、日本に関係のある「あの場所」に関することです。

 大統領は国防長官と国務長官に、ハワイの真珠湾や太平洋の第2次世界大戦の歴史的な場所を、国防上の支障にならない範囲で、国定史跡(national monument)に指定することを検討するよう指示しました。真珠湾以外の場所がどこなのかは不明ですが、現在も米領のミッドウェイ島を記事は取り上げています。グアム、サイパン、タラワなどでも激戦が行われましたが、記事では触れていません。沈没した戦艦アリゾナのような場所はすでに若干の保護を受けています。1906年の遺跡保存法(The Antiquities Act)によれば、大統領は議会の承認を得ずに国定史跡を指定できます。記事によれば、セオドア・ルーズベルト大統領がデビルズ・タワー(映画「未知との遭遇」に登場した山)を最初の国定史跡に指定しました。1932年にハーバート・フーバー大統領がグランド・キャニオンを、1924年にカルヴィン・クーリッジ大統領が自由の女神を、国定史跡に指定しました。その他、何人もの大統領が国定史跡を指定したり、既存の史跡に追加したりしてきました。しかし、戦争に関する場所はほとんどありません。

 ブッシュの要請は、うまく行かない戦争の代用品として発せられたとしか思えません。明らかに、心理学でいう「代償行動」(欲求が満たされない場合、それを別の形で満たそうとする行動)と言うべきです。アドルフ・ヒトラーが、戦況が思わしくないのに、兵士の制服や勲章のデザインを決めるのに多くの時間を割いていたことを連想させます。もっとも、ヒトラーの場合は、戦況が悪いことを知らなかったのだから、十分な報告を受けているブッシュとは違うかも知れません。ブッシュはこんなことを考える時間があったら、イラク問題を考えるべきなのです。

 また、ほかの大統領が戦争と関係のない場所を指定したのに比べると、ブッシュ大統領が選んだのは、自分の父親が参加した第2次世界大戦の戦跡でした。控えめに見ても、大したアイデアではなく、大統領の才覚のなさを実感させるだけの話です。いま必要なのは、イラク問題から足を引き抜いて、テロ問題を解決する方法です。ほかのことは最小限にとどめるべきです。

 これから数ヶ月かけて調査が行われ、報告書が出されることになります。当然、史跡を指定することを前提に調査が行われるわけですから、特に問題がなければ、指定は決まるでしょう。しかし、それには何の意味もありません。

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