BW社の「限りなく呆れた」主張

2008.6.20



 military.comによると、民間軍事会社ブラックウォーターに関する訴訟で珍事が起こっています。パキスタンで起こった航空機事故について、同社の姉妹会社がイスラムのシャリーア法の適用を裁判所に要請しています。

 2004年にブラックウォーター社の姉妹会社プレジデンタル・エアウェイズの航空機が中央アフガニスタンの山に墜落し、兵士3人と搭乗員3人が死亡しました。このため、兵士の妻たちはプレジデンタル社を告訴しました。同社は、同社が政府のエージェントを務めており、兵士は政府を告訴できないことを理由として、告訴を棄却するよう裁判所に求めました。昨年、連邦裁判所判事はこの主張を却下しました。そこで今年4月、プレジデンタル社は、この事件はアフガニスタンのイスラム法によって管理されると主張して、控訴棄却をフロリダ州の連邦裁判所判事に要請しました。さらに、軍事的な決断に裁判所が関与すべきでないという憲法の規定により、告訴を棄却させることを計画しました。この事故の原因について、国家運輸安全委員会はプレジデンタル社に責任があると主張しています。

 イスラム圏で起きたことはイスラム法で裁くべきなら、これまでにブラックウォーター社の警備員がイラク人を殺害した事件もすべてイスラム法で裁くべきだと言いたくなります。警備員の全員が死刑になることは間違いがありません。これだけ考えても、同社が単に賠償金を払いたくないために理屈をこねているだけだということが分かります。

 法律上の議論としては、軍と契約関係にある民間会社が行った軍事サービスはすべて訴訟の対象になるのか、限定されるのかという興味深い問題になります。ここは訴訟を門前払いにせず、公判を開いてもらいたいものです。企業側の主張は、前例のない告訴に対する狼狽の表れでもあります。

 意地でも賠償金は払わないという民間軍事会社の態度には呆れるばかりです。これはもう、軍事問題ではなく、倫理的な問題です。しかし、この戦争はどこまで人間の醜さを見せつけてくれるのかという気がします。

 ところで、昨日紹介した元州兵のワーナーは、約半年間の刑期を務めることになりました。彼が青銅星章を受勲していたことが積極的に評価されたようです。(記事はこちら

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