イラク派遣で刑期を減刑?

2008.6.18



 陸軍の元ジャーナリストがイラク戦争への着任を拒否する一方、裁判で1年の通勤刑(work release)となった陸軍兵士に、イラクに派遣された期間を刑期から差し引くべきかという問題が起きています。

 military.comによると、マシス・シロウクス三等軍曹(Sergeant Matthis Chiroux)は今月、応酬されましたが、イラク戦争に反対であることを理由に着任を拒否しました。シロウクスは昨年夏に除隊する前に5年間、陸軍で勤務しました。しかし、アフガニスタンに6日間いたことはありますが、イラクには行ったことがありません。8月からは大学に通い、イラク戦争に反対する退役軍人と共に活動していました。彼は、イラク派遣命令は違法だと主張しています。

 military.comによると、オレゴン州の州兵アール・D・ワーナー(Earl D. Werner)は、不道徳な理由で15歳の少女と関係し、酒を飲ませた罪を認めました。2007年5月に、裁判官は365日間の通勤刑を宣告しましたが、軍の再派遣に応じるなら釈放すると付け加えました。通勤刑は服役就業施設に出勤して仕事をする刑です。十分な監視ができないことを理由に、ワーナーはトラック運転手の仕事を得られませんでした。そこで、イラクに6ヶ月間派遣され、4月下旬に帰国して、5月2日に除隊となりました。ワーナーは刑務所で17日間過ごしているので、348日間の刑期が残っています。6月13日に、検察官は裁判官にワーナーに残りの刑期を課すように要請しました。そこで、イラクに派遣された期間を、残りの刑期から差し引くべきかどうかについて、裁判所は今週、結論を出します。検察官や被害者の支持者たちは、ワーナーの刑期を減らすことに反対しています。ワーナーの弁護士は、彼は通勤刑の仕事を得られないので、刑務所に入る見込みだと述べています。

 米軍人の間に、派遣を拒否する動きが拡がっています。イラク戦争が誤っていたことは、すでに否定できないところまで来ています。そして、それを行動で示す軍人が増えています。シロウクスは脱走罪で起訴されるでしょう。しかし、こうした事件が増えるだけブッシュ政権のイメージダウンは大きくなっていきます。当然、大統領選挙への影響もあるでしょう。

 ワーナーの服役問題は、半分、笑い話のような気がします。アメリカでは刑に関して裁判官に大きな裁量が与えられているために、こうした問題が起こります。しかし、イラク派遣と刑期が同列視されるのは皮肉です。ワーナーがイラク派遣で給与やその他の恩典を受ける資格を得られたのなら、派遣によって利益が出ていると判断し、刑期に含めないという判断ができそうです。通勤刑では、普通、給料は支払われません。イラク派遣と通勤刑のどちらが辛い刑かは、判断のしようがありません。同じトラックの運転でも、イラクでは武装勢力の襲撃を受ける恐れがあり、それで死傷した場合、通勤刑とは比べられない苦痛を味わうかも知れません。兵役について考える時、こうした倫理上の矛盾がよく現れるのです。単純に兵役が「崇高な任務」などと考えるべきではありません。

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