米軍の新型榴弾砲の一端が明らかに

2008.6.10



 army-times.comが開発中の榴弾砲について報じています。2002年に開発が中止された「クルセーダー」はハイテクの大型榴弾砲でした。開発中の榴弾砲は、ハイテクである点は同じですが、より小型を目指しています。

 車体重量27トンとクルセーダーの40トンを大きく下回りました。これは燃費や輸送の容易さに関係します。エンジンはハイブリッド式です。ハイテク機器を動かすためもあって、発電量は420キロワットで、4,320軒が1時間で使う電気を供給できます。エイブラムス戦車の発電量は18キロワットですから、いかに巨大かが分かります。電子・光学・赤外線式のカメラで外を監視できるため、乗員は窓から外を見る必要がなくなります。レーダーは自分が発射した砲弾、敵が発射した砲弾の両方を監視できます。曲射弾道の砲は砲弾を高く打ち上げます。その軌道を対砲兵レーダーで解析し、発射地点を割り出せば、そこに砲撃を行えます。これを「対砲兵砲撃」と呼びます。このため、砲兵隊は砲弾を数回発射したら移動する戦術を使います。同様に、自分が発射した砲弾の軌道をレーダーで解析し、次弾の照準に活用すれば、より正確な射撃が行えます。砲は重量30kgの砲弾を1分間辺り6発発射できます。「Future Combat Systems」対応であるため、搭乗員は無人機から得られた映像を、タッチ式のスクリーンで直接見ることができます。これまでは無線機で知らされるだけだった敵の情報を映像で直接見られるわけです。

 これが次世代の榴弾砲の通り相場である性能です。自衛隊の自走砲もいずれはこうした性能を持つように置き換えられていく流れになるでしょう。ただ、無人偵察機などの情報処理をどうするかといった問題が残されており、適正に機能するかどうかが気になります。それ以外の機能はすでに確立されているものがほとんどなので、それほど実現は難しくないはずです。危険な偵察活動を無人機に行わせることができるのなら、それは陸上戦闘の戦術にとって、革新的な出来事です。戦闘の勝敗を左右する榴弾砲の攻撃が、より迅速に、正確に行えるようになれば、これを持つ国の優位性は大きく高まります。

 ところで、記事は榴弾砲がより精度が高まり、コラテラル・ダメージが低減されるという関係者の意見を紹介しています。しかし、こうした話はあまり本気にすべきではありません。どの道、武器は危険なものです。新兵器の性能は常に大きく宣伝され、実戦ではそれ以下の性能を示すものです。そう考えていた方が無難なのです。

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