マレン提督:「軍人は中立であれ」

2008.5.28



 military.comによれば、統合参謀本部議長のマイク・マレン海軍大将(Admiral Mike Mullen)が、大統領選挙を控えている現在、軍人に政治的な中立を求める記事を、広く将校に配布されている季刊誌に発表しました。大将が世界各地を回る間、「民主党が(大統領選挙に)勝ったら、イラクでの任務はどうなるのですか?」という質問を多く受けたのが、記事を書いた理由だということです。そんなことに気を取られずに、軍務に専念しろと大将は主張しました。

 記事は、統合参謀本部が退役軍人が大統領選挙で影響力を発揮することを懸念しているとも書いています。退役軍人が政治キャンペーンにアドバイスをしたり、政策変更を求めたり、テレビでコメンテーターを務めたりするのを、軍上層部が心配しているというのです。2006年には元将校がラムズフェルド国防長官の辞任を要求したり、ブッシュ政権を攻撃する本を書いたりしました。現役軍人は特定の政党の政治活動を行うことは禁じられています。この制約は除隊と共に消失するので、退役軍人は自由に政治に参加できます。

 前回の中間選挙では多くの元軍人が民主党から立候補したことを憶えている人は多いはずです。大統領選挙が近づくと、イラク戦争に不満を持つ退役軍人たちが、民主党候補を応援する恐れがあります。マレン大将の懸念のほかに、こうした心配が生まれてもおかしくはありません。傷痍軍人が表立ってイラク戦争の欺瞞を訴え始めたら、国民はその姿に同情し、民主党候補に有利に働くかも知れません。特に、愛国心の強い人が多い国では、その危険性が高いといえます。これまでは共和党を利した愛国心が、今回ばかりは逆効果を生むかも知れません。その過程で、色々な話が暴露される恐れもあります。この記事を読んで、今回の大統領選挙からは目が離せないのだと思いました。私は民主党候補の圧倒的な優位性は変わらないと予測しますが、選挙レースの中で起こる出来事は何があるか分かりません。しかし、そこに興味をひく要素が数多くあるのだろうと思います。

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