対テロ戦争で5番目の名誉勲章

2008.5.24



 military.comのニュースをいくつか、まとめて紹介します。

 対テロ戦で、ようやく5番目の名誉勲章の受勲者が出たとmilitary.comが報じました(記事はこちら)。19歳のロス・マクギニス上等兵(Pfc. Ross McGinnis)は、乗っていたハンヴィーの機銃手を務めていたところ、手榴弾が車内に放り込まれたのを見て、4人の乗員に警告しながら手榴弾の上に覆い被さりました。手榴弾は爆発し、マクギニス上等兵は2006年12月4日に死亡しました。

 イラクの戦いでは4番目の名誉勲章受勲です。かつてなく遅いペースでしか受勲者が出ないのには理由があります。バグダッドまでの侵攻作戦は弱体化したイラク軍が相手で、接近戦が少なく、英雄的、犠牲的な行為が生まれる余地がありませんでした。やがて、武装勢力は正面切って戦わない道を選び、待ち伏せやIEDを多用するようになりました。その結果、名誉勲章に相応しい行為が生まれにくくなったのです。

 共和党の大統領候補、ジョン・マケイン上院議員が、民主党の有力な大統領候補のひとり、バラック・オバマ上院議員が一度も軍務についたことがないのを批判しました(記事はこちら)。マケインはベトナム戦争時、操縦していた機が撃墜され、6年間も捕虜生活を送りました。国家への義務を果たしたことがあるかどうかは、アメリカでは愛国心を計るゲージとして使われてきました。

 しかし、こうした考え方が今回も通用するかは疑問です。軍務経験があっても、マケイン議員はイラク戦争の展望を最初から間違い続けてきました。反面、オバマ議員は最初から反対の主張を続けてきました。今のアメリカではどちらが大統領として相応しいとアメリカ人が考えるのかが注目点です。おそらく、選挙運動の中で両陣営が強調するのは、この2点です。私の考えでは、軍務経験があるだけでは、もう支持を得られない時代が来ています。目の前にある軍事問題を、的確に裁ける大統領が求められているのです。マケイン議員がそれをアピールできなければ、選挙には負けるでしょう。

 アフリカ系映画監督のスパイク・リーが、短編映画の審査員として参加中のカンヌ映画祭で、クリント・イーストウッドの硫黄島2作品には「黒人がひとりも登場しない」と批判しました(記事はこちら)。「父親たちの星条旗」の原作であるドキュメンタリー本にはアフリカ系が登場しませんし、「硫黄島からの手紙」はもっぱら日本人の物語です。アフリカ系米人が登場しないとしても変ではありません。

 今秋公開されるリー監督の次回作「Miracle at St. Anna」は、イタリアで戦った全員がアフリカ系米人の師団の物語です。この作品の製作によって、アフリカ系米人の問題がリー監督に強く印象づけられ、発言につながったのかも知れません。しかし、自作の宣伝のための発言とも受け取れます。イーストウッド作品が気になったのなら、公開時に批判するのが普通でしょう。イーストウッドもアンジェリーナ・ジョリー主演の「Changeling」の記者会見のためにカンヌ映画祭に参加しており、それを知って当てつけたような印象です。戦争は巨大なテーマです。こうした小競り合いを演じるのではなく、映画人はもっと大きな態度でウォームービーを製作する活動を行って欲しいものです。

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