不自然だったペトラエス大将の証言

2008.5.24



 army-times.comが、先日の上院軍事委員会の様子をさらに詳しく報じました。デビッド・ペトラエス大将(Gen. David Petraeus)が述べた内容がより詳しく載っています。

 その中で気になるのは、ペトラエス大将が「先週は過去4年間で最低の暴力レベルを記録した」と述べたことです。先週一週間が静かだからといって、それを議会に報告するのが不適切なのは言うまでもありません。たまたまテロ活動が少なかっただけかも知れないからです。テロの減少がトレンドとして現れないと、治安がよくなったとは言えません。先日書いたように、4月の戦死者は50人を越えました。しかし、5月は今のところ14人なので、テロ活動全般が低調だったと想像できます。そこで、ここ一週間に限定して、「お手盛り」の話をしたのだと考えられます。議員がそこを追求したのかどうかは記事からは分かりませんが、多分、黙って聞いていたのではないでしょうか?

 また大将は、2州の軍事統制が数ヶ月を過ぎるとイラク保安部隊に引き渡されると予測しました。アンバル州は来月、移管されるはずだとも述べました。先月は夏頃と言われていた権限移譲が早まったようです。本当に、アンバル州の治安権限が来月、移管されるのかに注目していたいと思います。

 今後の予定を復習しましょう。7月までに、増派した5個戦闘旅団が撤退し、イラクに残存する兵数は約140,000人になります。そこから45日間の猶予期間を持ち、ペトラエス大将がさらなる部隊の撤退を勧告するかどうかを決定することになります。余剰の撤退があれば、大統領選挙は共和党に有利になり、そうでなければ民主党に有利になります。どちらの場合でも民主党候補の優位性は変わらないかも知れませんが、選挙への影響はかなり大きいでしょう。メディアは情勢そのものよりも、情勢が及ぼす影響に目を奪われがちです。撤退の有無は大々的に報道され、選挙への影響が語られるでしょう。それが有権者に必要以上の影響を及ぼすかも知れません。通常、こうした影響は大勢を動かすほどではありませんが、無視しない方が賢明です。本来、イラクからの撤退は軍事的な問題ですが、いまや政治的な問題へ姿を変えているのです。

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