PTSDの専門家ネットワークが結集

2008.5.21



 軍人のPTSDがいよいよ大きな問題となってきました。military.comによれば、精神科医、心理学者と他の専門家が全国的なネットワークを設立して、戦闘経験者やその家族にカウンセリングを提供しようとしています。

 全米の10%程度の専門家を動員して、退役軍人とその家族のために活動することがギブ・アン・アワー財団(the Give an Hour Foundation)の目標です。この財団の理事、バーバラ・ローゼンバーグ博士によれば、過去7年間にイラクとアフガニスタンに160万人以上の軍人が派遣され、少なくともその20%が心配症、鬱病、重大なストレス障害と戦ってきました。この財団は、現在、1,200人の資格を持つ専門家がいて、州に1時間を軍人やその家族を診るために費やしています。エリー・リリー財団(The Eli Lilly foundation)は、この財団へ百万ドルを寄付しました。

 160万人の20%といえば、32万人です。少なくともこれだけの人数がPTSDに悩まされているのは異常な事態と考えなければなりません。すでに知られているように、この数は少なめに見積もられている点を考慮しなければなりません。軍人の中には、キャリアに傷をつけることを恐れて、PTSDを申告しない者がいる点を忘れるべきではありません。現に、復員軍人援護局の今月2日付の資料をみると、PTSDに関する補償を受け取っている退役軍人は308,402人で、推定値よりも少ないのです。記事には、国防総省や復員軍人援護局の支援を受けるためには、長い距離を移動しなければならない者がいるとも書かれています。この財団はそういう問題を解消する一助になるとみられています。復員軍人援護局は全国に多数の病院と診療所を持つ巨大な組織です。病院だけで155カ所もあり、その他に健康支援のための施設が1,400カ所以上もあるのです。それでも、十分なケアを行えない地域があるのは、米国土の広大さを実感させます。

 私はこうした活動に日本人も関心を持ってもらいたいと考えます。財団のホームページからは寄付もできます。軍事雑誌を読みふけって、兵器のデータを頭に入れ、自分が軍事通だと考えるのが軍事に関心を持つことではないのです。

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