VAが医師にPTSD診断を避けるよう奨励?

2008.5.16



 army-times.comによれば、復員軍人援護局(VA)が医師に対して、退役軍人をPTSDと診断しないように依頼する電子メールを出していたと退役軍人を支援する団体「VoteVets.org」が公表しました。

 PTSDと診断された退役軍人は健康保険給付や障害退職金の資格を得られます。しかし、適応障害の場合は、短期の障害であり、こうした措置の対象となりません。復員軍人病院のPTSDプログラムのコーディネーターから医師に送られた電子メールには、利益ばかりを追求する退役軍人に対しては、そのままPTSDと診断するのは避け、適応障害と診断するよう書かれていました。また、PTSDを診断するための高価なテストを行う時間はないとも書かれています。同局の長官ジェームズ・ピーク(James Peake)は、電子メールの存在を認めましたが、電子メールはひとりの職員によって書かれたものであり、同局の公式な政策ではないとのことです。別のサイトに、このメールの原文が掲載されています。(こちらをクリック)

 おそらくこの事件は、利益ばかり追求し、医師にPTSDと診断することを強要する退役軍人に対する対処として書かれた電子メールがきっかけなのでしょう。しかし、電子メールに疑問を感じた医師たちが支援グループにメールを転送し、ちょうど日本で起きている高齢者の保険制度の問題みたいに、退役軍人の医療サービスの問題として公になったのだと考えられます。国家に貢献した軍人に対して、医療や補償を渋るようなことは、退役軍人の支援団体が許しません。

 支援団体の主張は誤っているわけではありません。これは倫理的問題というよりは、むしろ医療現場の問題です。こうした事実があると、退役軍人はPTSDの症状を医師に申告しにくくなります。利益追求型の退役軍人だと医師に認められたら、実際に症状があるのに、そのとおりに診断してもらえないという不安があります。医師がPTSDの症状を積極的に確認しようとしない限り、患者は問題を解決できずに終わるかも知れません。支援団体が声をあげるのは当然なのです。

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