米軍の外出禁止令が続く沖縄

2008.5.11



 marine-corps-times.comが、沖縄の在日米軍に関する長文の記事を掲載しました。婦女暴行事件などの不祥事の結果、米軍は制限を受けた生活を送っているという内容です。

 休暇中の規則がより厳しくなったために、ほとんどの兵士は夜間外出ができなくなりました。そのため、兵士たちは基地内のクラブで遊び、歓楽街にいるのは日本人ばかりだということです。米軍兵士へのインタビューがいくつも載っていますが、それよりも目を惹くのは、沖縄の歴史に触れている点です。琉球王国から、日本の支配、太平洋戦争、戦後の米軍による統治と返還後の状況について説明し、米兵が起こした事件がどれほどの反響を引き起こしたのかを解説しています。沖縄の人が、第一に自分が沖縄県民であり、日本人としての認識は二の次だと考えていること。米軍が、もはやいかなる誤りも認められないと認識していることも書かれています。

 ところで、先日、広島市で集団強姦を働いたとされた、当時、岩国基地勤務だった4人の海兵隊員のうちの兵長1人に「同意がない性的接触」と認定され、懲役2年と不名誉除隊を宣告されました。肉体的な暴力や脅迫行為はなかったことが認められたために強姦罪は成立しなかったものの、異性との合意のない性交は軍規が厳しく定めるところであり、それを免れることはできなかったのです。連邦法、州法でも「同意がない性的接触」は違法行為ですが、罪刑は軍法ほど重たくはありません。

 日本の刑法では集団強姦は懲役4年以上の有期刑ですが、統一軍規法典では強姦罪(第120条)は最高刑が死刑で、法律一般よりも遙かに重たい罪刑が用意されています。同じ第120条には、同意のない性行為(carnal knowledge)の規定があります。これにはいくつかの条件が示されていますが、配偶者でない者との性行為が適用されたのでしょう。条文を読むだけでは、性交を行った場合だけ罪に問われるように読めますが、そうではありません。ここで規定されている性行為は、実際に性行為を行うことだけを意味しません。性交をするために被害者の身体的な事由を奪ったり、体の一部を接触させた時点、あるいは未遂の時点でも成立すると考えられています。軍事法廷のマニュアルによれば、「性的な接触」とは、虐待、辱め、貶めのためか、性欲を喚起したり満足させるために、他人の外部生殖器、肛門、股の付け根、胸、腿の内側、尻に、直接または衣類を通して意図的に接触すること。または他人に前述の目的のために、前述の場所を触るように仕向けることと定義されています。法律の常識ですが、条文にすべてのことが明記されておらず、運用上の解釈を読んではじめて内容を理解できる場合が少なくありません。軍法の場合、それが特に大きいようです。

 実際に、第120条によって死刑が確定することはないでしょうが、それは犯罪の内容に左右されます。統一軍規法典の殺人罪(第118条)は、強姦殺人は最高刑が死刑と決められています。検察の求刑が懲役1年と長かったのも、これを反映しています。最終的には、懲役2年は司法取引により、懲役1年へ減刑されました。

 米軍が日本の司法よりも厳正で規律正しいからと考えるだけでは軍法の本質を見失います。軍隊は、戦場で兵士が強盗や強姦を働かないように、平時においても性犯罪の罪刑を重く設定しているものなのです。最近は、女性兵士が増えたことから、軍隊では孤立し狭い場所で若い男女が生活をすることが当たり前になり、人間の尊厳を尊重する観点から、性犯罪は強姦をすることや強姦する意志を持った行為だけに限定しないとするようになっています。

 兵長にとって、軍刑務所での1年間はきついでしょうが、不名誉除隊は軍人であったことで受けられる恩典のほとんど全部を失います。これまで何のために汗を流してきたのかが分からなくなるわけです。

 ところで、沖縄の実際はどうなのでしょうか。この記事を読んだ沖縄の方は、ぜひとも現地の様子を教えてください。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.